訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
価格:章別決済
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第1章 First contact
 異界的とも言える恐怖に心臓を鷲掴みにされて息をのみ、声にならない悲鳴を上げて走り出した。ここまででも軽く7kmは走っているハズだが、それまでの疲労は旋風に巻き上げられたかのように消え去った。そして全速力で前方――北へ向かって走り出した。
 数百m先には街明かりが煌々と輝いている。それを目指して駆け出したのだ。暗がりで恐怖に襲われた時、或いは身の危険を感じた時は、明かりを求めて走るのが人間の本能なのかも知れない。

 やっとの思いで人工の光が溢れる市街地へと入り込み、足を止めて極限まで酷使した心肺機能を休ませてやる健吾。
 ここまでどう走ったのかさえ記憶が曖昧だ。自分がどんな表情を浮かべていたのかも定かではない。ただ光を目指し、背中に張り付いて離れない、理解を超えた恐怖からひたすら逃げた――ただそれだけの印象しか無い。
 しかし光の中に辿り着き車の往来も増えたせいか、後ろを振り向いて確かめてみた。そう、それまで後ろを向くのが怖かったのだ。暗闇に怯える幼子の様に。
 まだ荒い呼吸を整えつつ健吾は振り向いた。街灯の明かりと車の走行音に包まれたせいか、胸中にあった疑問が口から転がり出て来る。

「何だったんだ? アレは……」
「アレとは御挨拶ね」

 返事のあろうはずが無い独り言に返された、涼しげな女性の声。落ち着き払った印象を与える事だろう、普通ならば。だが今は……

「うぉわあぁぁぁ!」

 無様としか言い様のない悲鳴を上げて飛退き、尻餅をつきながら、まだ後ずさろうとする健吾。その目に映ったのは、先刻の飛行物体から降り立った少女に間違い無かった。返された言葉からも明らかだ。
 だがその姿は、得体の知れない恐怖とは別に、男なら誰でも目を奪われてしまうものだった。長く艶やかなストレートヘアは、夜の闇を溶かしたかのような美しい黒。それとは対照的な白皙の肌。柔らかな曲線を描く柳眉の下に輝く大きな瞳は、長い睫毛と綺麗な二重瞼に守られている。スッキリと通った鼻梁。ほっそりとした首筋から下は、白いタイトミニのワンピースで覆われ、足は膝上まである同色のブーツで守られていた。ワンピースの袖は無く、華奢な肩口からむき出しの腕は、少女から大人の女性へと変わる時期だけの神秘性を見せていた。
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