訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第2章 at the school 
 沙綾が健吾の方を振り返る。肩越しに左横顔が見える。芸術家が渾身の筆で描いたかの様な左目が健吾を見つめていた。

 沙綾の腰に軽く添えられていた右手が上がる。そのまま人差し指が伸ばされ、級友達に向けられると――彼らの顔から表情が消え、回れ右をしてぞろぞろと校舎へと引き上げ始めたではないか。

「これは――」

 恐らく昨夜の自分と同じではないのか? 沙綾の右手首にのぞいた白いブレスレットが淡い光を放つのを、健吾は見逃していなかったのだ。

「そう、昨晩の君にもこれと近い事をしたの」
「何故だ?」
「それも含めてキチンと話がしたいの。今夜は空いてる?」

 最後の一言だけ聞けば、まるで逆ナンパだ。が、そんな色っぽい話でも雰囲気でもなかった。

「ああ、俺も聞きたい事が山ほどある。望むところだ」
「そんなに怖い顔をしないで――と言っても無理よね。ごめんなさい」

 またもやあっさりと毒気を抜かれた健吾だった。悪びれもせず、気を悪くした風も無く、穏やかで柔らかい笑顔のままで、極めて自然に沙綾は謝ったのだ。それでいて謝罪の気持ちは健吾の胸の奥まで届き、強固な防壁を築いていた警戒心に僅かな綻びを入れたのだった。

 ――ほんの僅かでしかなかったが。

「お前――いや、君は一体……?」
「それについても説明するつもりよ。昨夜と同じ時間に私が『降りた』場所でどうかしら?」
「分かった。それでいい」

 予鈴のチャイムが鳴り響く。そろそろ教室へ戻らなければならない。

「教室へ戻る時間だ、行こう。遅れたら何を言われるやら分かりゃしねぇ」
「……面白いわね、『ここ』の人達は皆」

 見下しているのでもない、からかっているのでもない、純粋に「面白い」と思っている。そうとしか見えない笑顔で、沙綾は健吾を見つめたのだった。
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