訪問者 ―visitor―
第2章 at the school
そんな展開を見ていた担任・坂本は、普段の健吾が「やや堅物」なのを知っているだけに腹を抱えて笑っていたが、いつまでも放っておくわけにもいかず
「あ~美作、昼休みでも使って湯浅さんに校内を案内してあげなさい。それと『校内』と『案内』をかけたワケじゃないぞ、念の為」
普段から突っ込まれている坂本の予防線など全員華麗にスル―してしまい、今度は違う方向で突っ込まれる事となってしまった。
「先生! なんで美作に!? 黒瀬さんの立場が!」
「いや、コイツはもういいでしょう!」
「先生、美作に弱みでも握られたんですか!?」
「いや待て、美作。賄賂は幾ら送ったんだ?」
もう無茶苦茶である。坂本も「いやちょっと待て、あのな……」以降の言葉を繋げない有様だ。この事態に女子達の一部があきれ果てたのか、遂に健吾を擁護する声を上げた。
「落ち着きなさいよ男子!」
「転校生を案内するなんて、当たり前の事でしょう!」
「アンタ達、何なのよ一体……」
「ちょっとアンタ達いい加減にしなさいよ! 案内するんなら少しでも面識のある方がいいに決まってるでしょ!」
坂本がこれ幸いとばかりに女子達に便乗した。
「そうだぞ諸君、当然の流れだ。大体だな、当時者の湯浅さん自身も、鼻の下を伸ばした連中に案内されたんじゃぁ気が気じゃあるまいしな。同性でという線もあるが、まぁ顔見知りの方がいいんじゃなかろうか? どうかな?」
最後の一言は無論、沙綾に向けたものだ。そして
「はい、そうですね」
あっさりと肯定した。相変わらずにこやかに。この「そうですね」が、どの部分に対する物かは不明だが、こうして健吾が案内する事に決まった。
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