訪問者 ―visitor―
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発行者:秋月乱丸
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ジャンル:SF

公開開始日:2014/01/19
最終更新日:---

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訪問者 ―visitor― 第1章 First contact
 規則正しく吐き出される熱い息が、星の瞬く夜空へと吸い込まれて行く。

 2012年4月中旬。夜9時を過ぎた頃。満月を過ぎた月を右手に臨みながら、東へ向かって走る若者がいる。名前は美作健吾《みまさかけんご》。この四月に岡山県立S高校の3年生になったばかりだ。特に恵まれた体格とは言えない。やっと170cmに届こうかという身長、60kgあるか無いかの体重。やや筋肉質だが、いわゆるマッチョとはとても言えない。
 陸上部の3年生で短距離をやっているが、大会に出られたり出られなかったりという「準レギュラー」的なポジションに居る。これまでは特に自己顕示欲等とは無縁な生活だったが、高校生活最後の年だ、何か成果を残したい――そんな思いを抱き始め、自主トレに励んでいるのである。
 心地よい夜風に髪が揺れる。やや短めのストレートヘアをなびかせながら、交差点を左へと曲がる。遠くの山を見下ろす月の投げかける淡い光が、前方に薄い影を作っている。健吾はこれが好きだった。
 熱くなった身体を夜風が冷やしてくれる中で、月が写した自分の影が前を行く。夜の闇の中で生まれる影。街中ならば人工の明かりで当たり前の事でも、片田舎で街灯もまばらな道では幻想的な気分になってしまう。車が来る度に、ヘッドライトでかき消される儚い夜の影。しかし、車が通り過ぎてしまえばまた生まれる淡い影。それがまるで自分を励ましているように思うのだった。
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