解らない所から始める不動産投資
第1章 登場人物紹介とプロローグ
崇はサラリーマンとして6年目となったある日、蒸発した父親の稔の電話を受けた事がきっかけだった。
「崇、久しぶりだな」
9年以上音沙汰がなかった父からの連絡である。
この時の崇は母は他界し周りには誰も居ない状況だった。
「親父か?今何処にいるんだ?母さんは2年前に他界したんだぞ。連絡もよこさないで今まで何やってたんだ」
「すまない。今度会って話がしたい。お前の家に行っても良いか?」
崇は了承し父を部屋に迎え入れる事にした。
崇は父から蒸発した後の経緯を聞き、実は風間家には祖父太郎が残した遺産があること、それで人生を建て直したい旨を聞かされた。
要約すると栃木県のある市街地の国道沿いに300坪の土地と家屋と工場が遺産分割されないまま存在し、そこの固定資産税が払えず、間もなく国に差し押さえられる。
稔はそこで車のブローカーをしてし、生活を建て直したいが、遺産が未分割の為、その遺産分割をまとめて欲しい。
それが稔から聞かされた内容だった。
具体的な内容は、この遺産分割には稔、和代、武司と妹2名の5人の相続人が存在していた。
経済的に困難を極めている稔が土地の5分の4を取得し、叔父の武司が残りの土地を取得。
和代は長男稔に遺産を譲渡し、妹2名は各々金銭にて話の折り合いがついていた。
問題は妹2名に支払う金銭と固定資産税の滞納金の納付、稔の事業資金の捻出だった。
そこで稔は息子の崇に自分の分の土地家屋を住宅ローンで購入させ、一気に事態の解決を図ろうとしていたのだ。
崇は少し考えさせてほしいと稔に返答し、後日彼女の秋元香に相談した。
「私は絶対に反対!あなたが何故そんな事をしなければ成らないの?それに地方の土地にそんな価値があるわけないじゃない。私と結婚する気あるの?」
崇は彼女の正論に、耳を貸さなかった。
いや彼の劣等感が耳を貸せなかったのだろう。
3