vol.2「亜美通信」7月特大号
第1章 桜井亜美から極彩色のトキメキをお届けします!
寝室の半分をカーテンで仕切ったコーナーで、白いキャビネットの一番
下のひきだしのカギを開ける。
白い小箱と木箱に入れたスナップ写真の束を出して、中身を床にぶちま
けた。王冠のように六つの丸いツメでとめた、ムーンストーンのリン
グが転がり落ち、ドレッサーの下に入ってしまう。あたしは膝をつい
て腕を伸ばし、やっとリングを見つけた。
それほど高価なものじゃないけど、あたしはずっと大切にしていた。
29歳の誕生日にフジからもらった贈り物だから。
それから夏の海や香港やライブ会場でフジと2人で撮った撮った写真を、
次々にめ くっていく。
すべて見終わると、ゴミ袋に全部つっこみ、一階のゴミ置き場まで出しに
行った。でも五分もしないうちに激しい後悔に襲われ、また取り戻しにいく。
結局、ゴミ袋から拾い集めた写真とリングを、空のポーチに突っ込んで
元の場所に戻した。
蒼海フジ。
フジはあたしは学生の頃からハギと結婚する直前まで10年間恋人だった。
あたしたちは結婚を意識しはじめた30歳の時に大ゲンカして、少しの間、
会わなかった。その間にフジはゼミの後輩の鈴と浮気し、たった一度のセッ
クスで妊娠させてしまったのだ。激怒したあたしはたまたま仕事で知り合った
ハギと結婚を即決し、1ヶ月後に結婚。
それから1年、ついにフジは出来ちゃった結婚を決心したわけだ。
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