みゆ・M娘のとろける粘膜
第5章 スリル
みゆが個室へ逃げ込むのと同時に、男子トイレの中に外から誰かが入ってきた。
どこか外れた調子で「うぃー」と鼻歌を唸っている。酔っ払っているのかもしれない。
さっき聞こえた声は、それだったのだ。
やってきたのは中年の男だった。小汚い服をだらりと着て、異様な臭いを放っているホームレスだろうか。
そいつは垢にまみれたキャップをぐい、と上げると、彼を胡散臭げに見た。
「よぉ兄ちゃん、どうしたよ、そんなところにぼうっと立って?」
「いえ、別に」
彼はみゆが逃げ込んだ個室をちらりと見た。
そのドアは細めに開いていて、中からあのぱっちりした瞳が少しだけ覗いていた。心配らしい。
何気ないふうを装って彼は小便器に近づいた。
「トイレに行きたくなってここに入ったんですけど、夜こんなところに来る機会がないもんで。汚いもんですね」
「汚い言うてもよぉ、皆ここで出すもん出して行くからしょうがないべ? 別に飯食うわけじゃないしの」
そういうと男は便器のひとつに向かってズボンのチャックを下ろし始めた。
奥の個室に美女が隠れていることには、まったく気づいていないようだ。
彼はほっとして自分も同じように並んだ。
尿意はなかったが、しているふりをしないと怪しまれる。
じょろじょろと男の排尿の音が聞こえてきた。
それと同時に、能天気な声が話し掛けてくる。やはり酔っているようだった。
「あーあ、何か楽しいことはないかの、兄ちゃんよ?」
彼は体を捻り、またちらりと個室の隙間を見る。みゆの不安そうな瞳と目があった。
いま彼女を外に出させたら、楽しいどころか、この男は腰を抜かすだろうな、と思う。
個室に隠れてこっそりこっちを伺っているみゆを意識しながら、彼は小便をしているふりで男に話しかけた。
「楽しいこと、ですか。いい女でもいればいいんですかね」
後ろの個室で、ひっ、とみゆが息を呑む気配がした。
まさか、私をこの薄汚い男に差し出すつもりなの? ──そう思ったのだろう。
そうとは気づかず、小汚い男はのんびりと排尿をしている。
「いい女かぁ、そうだなぁ、いれば最高だけど、俺たちみたいなのに回ってくるはずねぇしよぉ」
彼は振り向き、細い隙間から覗くみゆの瞳と視線を絡ませた。
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