死にたい女と逃げたい女
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ジャンル:その他

公開開始日:2013/08/08
最終更新日:---

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死にたい女と逃げたい女 第1章 血の気
《目撃者》

今夜も残業。

気分転換に屋上に行く為に階段を登った。

私の働くオフィスは6階にあるが煙草が吸いたいが為に8階まで向かうのだった。
オフィスの時計は23:04を指していたのを見てとりあえず一服の為に席を立ったのだ。
空腹と疲労感で手すりに頼りながらも片方の手には煙草を握りしめ階段を登っていた。

昼休みにはビルのテナント内で働く者が憩うのだが、さすがにこの時間は屋上は独り占めが出来る。
化粧直しもせず、髪も直さずとも堂々と煙草が吸える時間だ。

 屋上へ入る為に重い扉を抜けた。

春でも夜風は冷たいが、パソコンに向かい続け固くなった身体をほぐす為に大きく手を広げ深呼吸をした。
その後すぐに煙草に火をつけ屋上の灰皿まで歩く。
しかし私はすぐに足を止めた。

先客に気づいたのだ。

8階の屋上の手すりの外側に彼女は立っていた。
春の夜風にセミロングの髪が揺れている。
黄色いバッグ、それに黒いパンプスが手すりの内側に綺麗に揃えられている。
両手で手すりに捕まってはいるものの、今にも離してしまいそうだ。

私は動けなかった。

血の気が引くとはこの事だろう。とにかく恐くて思わず彼女から視線をそらした。

そっと逃げてしまいたい。

何故なら私の足音に気づいた時、彼女はその物音で他人の気配で飛び降りてしまうかもしれない。
そして何よりも私が今ここから逃げてしまえば、彼女が落ちた今夜を境にこれから一生その後ろ姿が私の脳裏に焼き付き、後悔と恐怖がつきまとう事が頭をよぎった。

しかしながらもっと出来ない事がある。

声をかける事。

私が話かけた時に彼女はそれこそ他人に気づかれた事で、またはその声かけに驚いて手を離してしまうかもしれない。すると結局は後ろ姿どころか飛び降りる瞬間が一生脳裏に焼き付き私を苦しめるであろう。

とにかくこんな事を考えている間にも彼女は手を離してしまいそうで私の足は恐怖と緊張で立っているのもやっとの状態になった。息すらまともに出来ない。
微塵も動く事が出来ない状態だ。


こんなにも呼吸をするだけで音が出てしまいなんて初めて知った。

 静かに浅く呼吸をするせいで余計に苦しくなった。心臓が痛いくらいにドキドキと動いているのを感じた。

立っているのも精一杯だ。
力が入らない。

急に春の風はいっそう冷たく凍えてしまいそうに感じた
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