みんな・愛してるよ
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成人向アフィリエイトOK
発行者:カオス
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ジャンル:恋愛
シリーズ:大好きだよ

公開開始日:2010/07/21
最終更新日:2012/03/12 22:53

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みんな・愛してるよ 第93章 第九十三話 愛情の形
三十分待っても帰って来ないから突っ掛けを履いて、玄関のドアを開ける。
薄暗い中周りを見渡すと下から声が聞こえてきた。
場所的には駐車場の方。
玄関の鍵を締めて僕は駐車場が見える階段の踊り場まで来ると声のするほうへ視線を向ける。
「どんな面下げて今更戻って来てんだ! アイツがどれだけきつい思いしたのか判らねー癖に! 良く戻って来れたよな? 」靖隆の怒鳴り声が四階の踊り場まではっきり届く。
健吾も何か言ってるみたいだけど僕の耳まで届かない。
一方的に殴り始める靖隆とガードもしようとしない健吾。
「八年だぞ? 八年! 毎日毎日ずっと夕方から夜まで彷徨い続けてみんなでどれだけ説得してもお前が帰ってくるだろうからって。帰ってくる場所を僕が用意するんだ! って言い張って強がって無理して熱が出てもどんなに寒くても毎日。それをいつも迎えに行ってた俺の気持ちが判るか? お前が生きてるの知ってて親友の最後の頼みだからって大好きな優輔の辛い顔見ながらお前は死んだんだって言い続ける痛み判るか? 判んねーよな? 」全てを聞きながら耐え切れなくなった僕は無我夢中で階段を駆け下りていく。
「ごめん……」やっとで聞こえてきた健吾の声は一瞬の内にその場から消え去っていきそうに聞こえる。
僕の胸はその間もずっと鈍い音が聞こえる度に胸が痛いくらい締め付けられ張り裂けそうに軋む。
玄関ホールから飛び出し駐車場へ続く道を走る。
「辞めて! 」スローモーションで僕の体が宙を舞う。
(健吾も謝らなくていいし靖隆も怒らないで。誰も悪くなんてないんだから。運命の、神様の悪戯なんだから……)

静かに瞼《まぶた》を開けると天井には規則正しいレーンとホワイトピンクのカーテンが掛かっていた。
カーテンの奥からは人の話し声が聞こえる。
話してるのは全員男の人で二人は聞きなれた大好きな声だから判る。
起き上がろうと体を動かすとあちこち痛い。
「意識が戻るまでは安心出来る状況ではないです」淡々と告げられる言葉。
「ありがとうございます」凄く暗くて優しい声音と打って変わった気がしてしまう靖隆の声。
「すみません。お世話になります」靖隆の声に負けず劣らずで落ち込んでる健吾。
「意識が戻り次第ナースコールでいいので連絡ください。それでは失礼します」担当の医師なのかカーテン越しに見える陰が一度会釈して部屋を出て行こうとする。
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