みんな・愛してるよ
第75章 第七十五話 琴美ちゃん
クラスのみんなが集まりだした頃ようやくホームルームを告げる鐘がスピーカーから鳴り始める。
そわそわみんな自分の席に着きそれぞれ先生が来るまで思い思いに過ごしながら時を過ごす。
鐘がなり終わる頃にドタバタと琴美ちゃんが教室に転がり込んでくる。
琴美ちゃんが遅刻ギリギリなんて珍しい。
琴美ちゃんも自分の席に着いて、ホームルームが始まる。
みんな居るのかを先生が名前を呼んで確認していく。
十分もしないうちに出席簿の確認が終わり、連絡事項を先生が告げる。
僕って忘れっぽいから先生からの連絡をノートにいつも書いてるんだ。
今日もノートとペンを引き出しから出して、頑張って書いていく。
「一週間後授業参観しますのでプリントを配ってください」
前の席に居る隆文君からプリントを受け取り、隣に居る琴美ちゃんへ一枚渡して後ろへ回す。
(優夜お父さん来てくれるかな? 優夜お父さんが駄目なら亮輔お父さん来てくれないかな? でも、優夜お父さんは退院がいつなのか判んないし、亮輔お父さんも忙しいから無理かな? だったらお兄ちゃん…無理か)とにかく誰か来て欲しいと思う僕は多分我侭。
でも、折角家族みんな揃ってこれから暮らしていける。
時には喧嘩したり笑い合ったり、色んな事を一緒に考えたり。今までみたいな誰か一人とか二人とかだけ苦しんでるとか僕は嫌だから。
家族が来て欲しいって我侭なのは判ってるけど、判ってるけど……
授業も終わり、下校時間になると、琴美ちゃんが綺麗な花柄の紙袋を渡してくる。
マフラーちゃんと覚えてくれてたんだと素直に思った僕はありがとうと琴美ちゃんに告げ、紙袋を開けた。
見覚えのないチェック柄マフラー。
僕の大事なマフラーは少しクリーム色の柄は入ってなかったはず。
いつも首に巻いてたから少し位食べこぼしのシミが付いていた様な気がするけど、それも僕にとっては大事なワンポイント。
でも、渡されたマフラーは全然違う新品のマフラー。
高いか安いかなんて良く判んないけど、大事な大事な物なのに。
だんだん涙が溢れてきて一粒、また一粒と頬を伝っては床へと吸い込まれていく。
「何で…なんで。僕のマフラーは? 僕の…お兄ちゃんとお揃いで、優夜お父さんが使ってたマフラーで…」僕の口から漏れ出す言葉は自分でも何を言ってるのか判んない。
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