みんな・愛してるよ
第39章 第三十九話 いういえ(キスして)
え?
僕の口よりはっきりした言葉だよね?
もしかして康宏がしてくれてる時はいつもこれだったの?
「優夜兄ちゃん。全部聞こえてるよ? 僕も優夜兄ちゃんが伝えたいって思ったことだけしか聞こえない振りしてるからそこは気にしないでね? 」優しく微笑んでくれた康宏だったけど僕にとってはなぜか恐怖の対象になってしまってる。
その日は何も考えなかった。
いや、考えれなかったんだ。
このコードは怖い。
僕の思いや考えを全て曝け出してしまいそうで。
夕方頃康宏は帰って行った。
当然亮輔が帰ってくるわけだからコードなんて必要ない。
だから外していってくれた。
このコードは嫌だ。
ただひたすらコードを見つめそのコードに手を伸ばす。
少しずつしか上がらないけど、先生が言うには頑張って練習すれば普通の人みたいに早くは無いけどちゃんと動かせて力も入るようになるんだって。
確実にとは言わなかったけど。
それでも、僕には十分過ぎる言葉だった。
それって亮輔に自分から触れれるって事だから。
それだけって周りの人からは言われそうだけど、亮輔に自分から触れる事。
それ自体が今の僕には羨まし過ぎる。
僕も亮輔に触れたい。
大好きな亮輔を肌で、中で、全てで感じたい。
触れて貰うばかりじゃ亮輔を満足させてあげれない。
そして、僕の罪は償えない。
玄関のドアが開く音がして亮輔が帰ってくる。
「ただいま。優夜。康宏はどうだった? 随分変わってただろう? 」
「りおおすけ。おえやあ。おあい。おうおえいあい」勝手に流れ出る涙を拭うことも出来ず泣いてること自体が恥ずかしかったけどそれよりも懸命にコードを指差し亮輔にありったけの思いを伝える。
「ん? これ嫌なのか? 怖い? もう、これ嫌い? って言ったのか? 」さすがに文章が長すぎて聞き返されるのを素直に首にありったけの力を込めて頷き返す。
「おく。あんあるああ。おうこえうえないえ」必死に亮輔に頼み込む。
175