メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第8章 ルディアンの杞憂
カップを傾ける手が止まって、ルディアンは、奥へと引っ込むマイラの後姿をジッと見つめた。
「…」
環境や、立場!? 許されない境遇の恋…なんだろうか!?
その先を、もうちょっと突っ込んで聞きたい衝動に駆られたが、これ以上は煙たがられるかな…と、ホゥッと息をついた。
腹立つな…、その男…。
白い息が、手に触れて、妙に熱っぽく感じる。
────────── 身分の差は、関係なし…か。
少し嬉しそうに微笑した時、ドアベルが鳴った。見ると、アルファロとセリエルが、連れ立ってやってきたところだった。
「なんだ、今日はお前だけか!?」
気安く話しかけてきたのは、同じ読書仲間のよしみからだった。出会ってまだ3度目だが、お互い、この街より南にある、ポーシャルドーの図書館や町並みを知っていたせいか、すぐに打ち解けた。
「祝日は、いつもやってないしね。こんにちは、セリエル」
笑顔で挨拶してくれたルディアンに、出会ってまだ2度目のセリエルは、ぎこちなく会釈する。
「この面子だけだと、貸切みたいだな」
ルディアンの隣に腰掛けたアルファロは、戻ってきたマイラに、ホットコーヒーを頼んだ。
「あ、こいつはミルクで」
『こいつ』と指差された挙句、勝手にメニューを決められて、セリエルがムッとして、すぐに訂正する。
「ローズティーで!」
強気の攻勢に、マイラがプッと噴き出した。
「負けてないわね。その調子よ」
そうして、受けたオーダーを手早く作っていると、今度はサマンドが合流した。
「あら、今日は皆さんお揃いで。もしかして、例の、読書会!?」
墓地帰りだと知ってるセリエルは、後をつけたことを、彼女には気づかれていないようだと知って、安堵しながら、読書会!?…と、アルファロを振り返る。
「今日はたまたまよ。やってるのは、大抵木曜かしら。時間があったら、いつでも来てね」
マイラが答えると、ルディアンが相槌を打った。
「あの曜日が、週の中で一番、息抜きしたくなるんだよね。女性の参加が増えるのは、大歓迎だよ。宜しく」
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