メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第7章 賑やかな尾行
素直さなら、あたしの方がよっぽど持ってるわ。好きな男には一直線だったんだから…と、元彼を思い出し、うっとりする。でも、自分より若い娘に浮気されて、すぐに別れたことまで思い出すと、デュマはげんなりした。
────────── 本っ当、男って、浮気性なんだから!
アルファロだって、元はカッコいいんだから、すぐに浮気するわよ。しっかり捕まえてないとね。
だから、あたしがせっついてあげてんのよーだ…と、デュマは自分の面白半分の茶化しを、正当化した。
そうこうしてるうちに、油断したせいか、アルファロの姿が消えていることに気づき、セリエルが慌てた。
「あれ? あれ!?」
さっきまで、20、30メートル先を歩いてたのに。
サマンドは、その先の方を、ゆっくりと歩いていて、特に変化はない。アルファロだけが、消えた。
往来する人々をかきわけ、アルファロの姿を捜すが、どこにもいない。すると、横から手が伸びて、セリエルは腕を取られた。
びっくりして右手を見ると、怖い顔をしたアルファロが、自分の腕を掴んで、睨んでいる。待ち伏せしていたらしい。
「お子ちゃまのくせに、オレを尾行するな」
昨日で飽きたかと思ったのに…、伯爵め、まかれたな…。そう思いながら、アルファロがうざったそうに、そう忠告すると、セリエルは頬を膨らませた。
「お子ちゃまじゃないもんっ!」
「どう見ても、ただの11歳」
ガーンとショックを受けて、セリエルが口を噤んだところで、アルファロは、今度はデュマを見て、釘をさす。
「家の者はまきこまないでくれ。こいつは、関係ない」
少し離れた所で2人を眺めていたデュマは、行き交う人々を避けるでもなく、スゥッと、そのままの体勢で近寄ってきた。
そして、アルファロのすぐ目の前までくると、ピタッと空中停止し、不気味に微笑む。
「あら、あたしがやったとでも!? 昨日も今日も、ついてきたのは、セリエルの意志よ。あたしがそそのかしたんじゃないわ」
悪びれた様子のないデュマを、アルファロは注意深く牽制しながら、セリエルの腕を離し、キツく言った。
「とにかく、帰れ。デュマも。オレのやり方に同意できないのなら、ついてくるな…。ついてきたいなら、おとなしくしてろ」
なんだかんだ言っても、彼女は依頼者当人だ。知る権利がないとは言えない。
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