メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
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発行者:海原 灯
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:メトセラの仲間たち

公開開始日:2013/07/18
最終更新日:---

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メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください - 第5章 風景画家サマンドとその妹デュマ
「私は、マイラとは去年知り合ったばかりよ。あなたは、帰ってきたばかりですってね。これから、ちょくちょく会うことになると思うけど、どうぞ宜しく」
 差し出された手を、アルファロは右手で握り、こちらこそ、と挨拶を返した。肩に担いでいるのは、画材一式だろうか。どこから帰ってきたのか、太陽の光をいっぱいに浴びたひまわりのように、サマンドはカラッとした笑顔を向けた。
「ゆっくりしていって。全部、あたしが描いた絵よ。マイラのお友達なら、お安くして差し上げてよ」
 言って、ウインクしたサマンドに、アルファロは、フッと笑みをこぼした。
「それは、どうも」
 安くはないが、びっくりするほど高くもなく、貴族の末裔として、資産に余裕があるアルファロには、お小遣い程度で買える金額だった。
 そういえば、家にある絵は、ほとんどが父親が買い求めた物ばかりで、絵画に詳しくない自分でも、有名画なら記憶に残っている。けして、美的感覚が悪い訳じゃない。そのアルファロの目から見ても、サマンドの絵は、十分魅力的なものだった。
 一枚あっても…良いかな。特にこのグレッグ山脈が、気になってしょうがない。
 調査の件はそっちのけで、絵の購入に真剣になりだしたアルファロの耳に、奥から出てきた腰の低い中年男性の声が届いた。
「どうも、このたびは、お忙しい所、我が社の取材に応じていただきまして、誠にありがとうございます」
 そう言って、彼は、サマンドに名刺を差し出した。
「あら、ルヴィンター社さん。ご無沙汰です。遅くなりまして、すみません」
「いえいえ、こちらこそ」
 話しこみながら、奥へと引っ込んだサマンドを見送った後、
「本当に、あの人!?」
と、アルファロが、姿の見えぬ隣人に問いかける。
「そうよ…」
 少しして、静かに答える声。その声がした方を見ると、デュマが、建物の柱に身を潜めながら、恨みがましそうな目で、サマンドのいる方を睨んでいた。
「放浪癖は、相変わらずね…」
 山とか、町並みとか、気ままに渡り歩いては、ところかまわず絵の具や筆をおっ広げて、画板に絵を描いていく女。ほとんど家に帰らないのに、両親の愛情は、すべて才能溢れる彼女へと向かった。妹のあたしの存在なんか、まるで無視。
 あんたのおかげで、何のとりえもないあたしは、どれほど悔しい思いをしたか。
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