メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第5章 風景画家サマンドとその妹デュマ
セリエルは、いてもたってもいられなくなって、急いで玄関へと階段を駆け下りると、外套をはおり、外に出て、ドアのカギをきちんと閉めてから、アルファロたちの後を追った。
建物の陰から、つかず離れずの距離で、2人の様子を窺うが、どうにも居心地の悪さを覚える。
アルファロの側に、ピッタリと寄り添う彼女の存在が、どうにも恨めしかった。
まるで恋人同士みたいで…。
ムッとした表情で、アルファロを睨むが、土台、こちらには気付いていない。時折、デュマと親しげに話している以外は、普段通りだ。
きっと、愛らしい顔をしてる女性なんだろう。ドアップで見た時は、あまりに不気味でよく観察できなかったけれど、目鼻立ちのよく整った、可愛らしい女性だったように思う。身長だって、一緒に歩いてても、違和感がないし。
あたしと歩いてると、本当、兄妹にしか思えないし…。
「…っ」
なんか、虚しい…。
人の後を追うのって、性に合わないな…と、そんな風に思った時。
「ごきげんいかがかな!?」
呼び止められて、振り返ったセリエルの目の前には、品の良い紳士…オルレイン伯爵が立ってこちらを見下ろしていた。
「あ、こんにちは」
軽く、帽子の鍔の辺りを持ち上げ、挨拶してくれた伯爵は、
「おやおや、今日も可愛らしいね、お譲ちゃんは」
と、目を細めた。
慌てて、セリエルが話の腰を折る。
「あ、あの…、伯爵、ごめんなさい。今はちょっと時間があまりなくて…」
「何をそんなに急いでるんじゃ!?」
「何をって…」
アルファロの後を追ってるんです、だなんて恥ずかしくて言えなくて、セリエルは顔を赤くして俯いた。
「あ、…あの…」
もじもじして、なんとか場を繋ごうとするが、焦る気持ちだけが増していく。
────────── あぁダメだ、こんなことしてる間に、アルファロたち、見失っちゃう!
振り返ると、どこかで道を曲がったのだろう。積雪から突き出す街路樹や、立ち並ぶ家々、疎らに行き交う人々の中には、もうすでに、2人の姿は視界から消え去ってしまっていた。
「…」
「どうか、したかの…!?」
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