メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第5章 風景画家サマンドとその妹デュマ
その様子をジッと見つめていたサマンドが、今度はこちらにも願い事をもちかける。
「本当、可愛い子ね。…ね、どう!? 今度、モデルやってみない!?」
「…モデル!? それって、絵の、ですか!?」
「そう。付き合ってくれたら、図書券あげるわ」
満面の笑みで願い事をされては、断るに断れない。でも、やったことがないせいか、緊張しそうで、セリエルはすぐには返答できなかった。
「やってみなさいよ。モデルなんて、やる機会、そうそうないわよ!?」
マイラに背中を押されるが、どうしても、気が進まない。だって、モデルって…。
セリエルは恥ずかしげに俯くセリエルに察しがついたのか、サマンドは陽気に笑って言った。
「大丈夫よ、ヌードになれなんて言わないから」
「え? そうなの!? 子供にまで…」
焦るマイラに、
「だから、言わないったら。あたしは、元々静物画専攻だし」
と、慌てて否定する。
「今すぐでなくて良いから、考えといて。じゃ、また」
他にまだ用事があるからと、サマンドは手を振って、店から出て行った。
「ねぇ、いつ復讐してくれるの!?」
その晩、22時をすぎてから、待ちかねたといったように、デュマが、2階の書斎でデスクワークをしているアルファロを問い詰めた。
「あたしは、あなたに、サマンドに復讐してってお願いしたのよ。あいつの周りをウロチョロするだけで、何もしてないって、どういうこと!?」
今日一日は、大雑把な素行調査のみで、ほとんどが、他の仕事に明け暮れたアルファロは、間延びした返事で、デュマをやり過ごそうとした。
「調査なんか必要ないから、とっとと復讐してよ! 種類はなんでも良いわ。あいつが凹むことなら、全部やって欲しいくらい」
すぐに行動に移してくれるものと思っていただけに、アテが外れて、デュマはお冠だった。
アルファロが、溜息をつく。
「…悪いが、いつまでに、という取り決めはしていないし、第一やるのはオレだ。慎重にいかないと、足がつく。それに、君の他にも、仕事があるんだ。もう少し、気長に見てくれないか」
それを聞いて、頬を膨らますデュマを、まぁ待て…と、宥める。
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