メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第5章 風景画家サマンドとその妹デュマ
放浪癖とでもいうのか、しょっちゅう外を出歩いては、気に入った場所に陣取り、風景画を描いている新進画家だという。今年に入ってから、この街へとやって来たばかりで、まだ慣れない街中を、物珍しい物を発見しては、メトセラに寄って、マイラと話に花を咲かせている。
「すぐそこで、アトリエを開いてるから、良かったら、いつでも寄ってね」
子供もペットも、大歓迎よ、そう言って、サマンドはニコッと笑った。
マイラとは山で出会ったのが付き合いのきっかけだった。アトリエに使えそうな良い部屋を探していて、たまたま近くを通りがかったら、偶然再開した。
「それにしても、たくさん買い込んだわねぇ。オレンジ好きなの!?」
自分用にも、紙袋1つ分のオレンジを買い込んでいるのを見て、マイラは呆れたように苦笑した。
待ってましたとばかりに、サマンドが顔をニヤつかせる。
「それがね、お願いがあるの。オレンジで、ケーキ焼いてもらえないかしら!?」
「ケーキ!? それはいいけれど、ホール1個分で良いの!?」
「ええ。親戚の子供がね、1週間後に誕生日なのよ。そのプレゼントにと思って。よくグズる子なんだけど、あなたのケーキなら、きっとおいしくて、夢中で食べると思うのよね」
「オレンジケーキかぁ。おいしそうねぇ。そういえば、まだメニューに加えてなかったっけ」
ふむふむ…と、マイラは頷きながら、必要な材料を頭で計算し始めた。
「うん、いける。オッケー。作ったら連絡いれるわ」
「良かった、ありがとう」
2人のやり取りを見てて、ひどく気さくな感じが、素敵だなぁ…と、セリエルは見とれた。
こんな仕事だと、やりがいあるだろうなぁと思いながら。そして、ふとアルファロのことを思い出し、途端に震え上がる。
…なんで、あんな訳の分かんない仕事をやるのよ、あいつは!?
「これなら、余分にもう1個くらい作れるわね。セリエル、アルファロにも作ってやろうか」
「え?」
いきなり話を振られて、セリエルはまごついた。
「一緒に作ろ。これなら、嫌でも反応あるわよ」
ニシシ…と笑うマイラにつられて、セリエルも思わず頷き返すが…、その怪しい笑いは、一体なんなんだろう!?
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