メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第4章 新進画家に復讐してください
「…私の…人生は、姉さえいなければ、もっと幸せに生きれたはずなのに…」
────────── 呪われたっ…!!
デュマの悲痛な声に、アルファロが眉根を寄せて、耳を傾ける。
キィッ…
そこへ、部屋の扉を開ける、小さな軋む音がして、隙間から、セリエルのおっかなびっくり眼が覗いた。
中々入ってこようとしないので、アルファロが呼ぶ。
「何してるんだ!?」
見つかって、しょうがなく扉を半開にし、中へと進むと、持っていたティーカップのセットをテーブルに置く。どうにも漂ってくる冷気に、つい興味本位で、チラッと、奥のデスクを伺うが、アルファロが座っている隣で、対面する形で依頼者が突っ立っていること以外は、あまりよく分からない。セリエルは頭の先から足のつま先まで、寒イボができるかと思うほどに震え上がったまま、用が済むと、すぐに回れ右をして、去ろうとした。
「お茶を入れるまでが、お前の仕事」
アルファロに待ったをかけられると、その容赦のない命令に、セリエルは、心の中で、激しく抵抗しながらも、なくなく戻った。
────────── 奴隷なんて、嫌だっ!
この部屋に来るのだけは、嫌で嫌で、しょうがなかった。まだ、これで、この部屋にお茶を運ぶのは3回目だが、…アルファロに依頼しにくる外部の人間は、ことごとく不気味としかいいようがなく…、目の前にいる女性も、例外なく、かなり怪しい。
騎士を辞め、この家に戻ってきてから1週間以上が経過する。新しい仕事は、なんでも屋のような内容だった。それこそ、待ち人捜しや、偉い人の越境の際のボディーガードなど、騎士でならしただけに、それを生かせる依頼を優先して受けているようだが、なんでこうも…依頼者と面会するのが怖いのか、セリエル自身も理由が分からなかった。
きっと、この部屋に何か、不吉なものがあるのかもしれない…。
地下室なんて、大体が、ヒンヤリとしてて、暗い。照明は、松明の炎や、ロウソクの火などで代用する為、この時代の人間は、夜は早々に就寝する。それだけに、昼ですら足を踏み入れるのが億劫な地下室など、好き好んで利用する者は少ないのだが…。アルファロは、依頼が来れば、朝も夜も関係なく、地下へとこもる。そして、その依頼者へのお茶出しに、セリエルも借り出される、という具合だった。
拒否権を行使したい!!
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