メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第4章 新進画家に復讐してください
そんな時、吹き抜けの天井に吊るされた鈴の音がチリンと鳴り、アルファロが我に返った。その目つきが徐々に変わっていく。
「ひっ」
怖気に襲われ、短く悲鳴を上げたセリエルが、慌てて逃げようとするが、アルファロが鋭く命令した。
「セリエル…、お茶、2人分」
「や、やだー! 地下に行くの、怖いっ!!」
「それがお前の仕事」
にべもなく言い放つと、アルファロは、不気味に微笑んだ。
「…この家の中では、オレの言うことは絶対だ。それがきけないっていうなら、恐ろしい目にあわせるぞ」
顔面真っ青になって、セリエルが喉を鳴らす。
「お、お、恐ろしい目って…、目って、何!?」
アルファロが、クスッと笑う。
「…秘密」
────────── …こ、…怖いっ…。アルファロが一番、怖いっ!!
急いで、お茶の仕度をしに、キッチンへと走ったセリエルを見送り、アルファロは一足早く、階段を、上にではなく、下へと降りていった。
セリエルを脅かしたヒョウキンな表情はどこへやら、一転して、ひどく真面目な顔つきへと戻っていきながら。
「カンブストリートD-42番地、青レンガのアパートの303号室に住む、26歳のサマンド。依頼者とは姉妹の間柄で、彼女は今現在、若手の画家として活躍中…か」
今書きとめたばかりの紙片を取り上げ、アルファロが読み上げる。
「…ということは、君のお姉さん…ということか」
どう見ても、外見上は、20歳を超えたばかりの小柄な女性を見上げると、アルファロが聞いた。
「そうよ。私は、妹のデュマ。姉に…、サマンドに、復讐したいの」
不気味でストレートな依頼に、アルファロは答えに詰まった。
正直、こういう依頼を受け初めてから、初めてのケースだった。いずれは、こういうのも来るだろうとは思っていたが…。
「一体、どんな恨みがおありで!?」
とりあえず、詳しく聞かないことには、始まらない。
「行く先々で不幸が重なり、稼ぎもなく、全財産が尽きたの。これもすべては、できる姉をもったせい。できる姉妹をもった者は、一生周りから比較されて、不運に見舞われ続ける運命なの…。私は、姉が憎い…」
できる姉をもった為に、嫌気をさして、家を飛び出したまでは良かったが…。要は、うまく生きれなかった、そのすべての責を、姉に被せたいらしい。
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