メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
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発行者:海原 灯
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:メトセラの仲間たち

公開開始日:2013/07/18
最終更新日:---

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メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください - 第3章 カフェ〈メトセラ〉のマイラ
 街路を、膝の高さまで降り積もった雪をかきわけるように突き進むセリエルは、かじかんでしょうがない手指をジィッと見ると、忌々しいとばかりに、雪の中へと突っ込んだ。
 アルファロの顔の感触が、手から消えない。
 フンッ、ちょっとばかり、カッコいいからって…。
 見つめられた瞬間、ドキッとしてしまった自分に不甲斐なさを感じながら、悔しそうに拳を作る。
 でもそのうち、朝食を抜いてきたせいか、お腹がグゥと鳴って、弱った顔になった。そういえば、昨日の夜ご飯も抜いて、疲れてすぐに寝てしまったんだった。でもそれを言ったら、昨日は一日中、何も食べていない。飛び出したのは、その前の晩だから…。
 よく、身体がもってるものだ。
 それもこれも、皆、アルファロのせい…と、すべての元凶を押しつけると、顔を上げて、スッキリした様子で、足先を、学校から馴染みのカフェへと向けた。始業までは、まだかなり時間的に余裕がある。何か腹ごしらえしていかないと。
 こんなに朝早いと、飲食店は軒並み閉まっているが、セリエルがよく行くカフェ〈メトセラ〉は、準備中の看板は提げられているものの、中ではすでにマスターのマイラが腕によりをかけて、オリジナルケーキを作っているのを知っていた。お店で出しているお菓子やケーキは、すべてマイラの手作りだ。
 おいしいんだ。
 初めてアルファロに連れてきてもらった時、あまりにおいしくて、マイラの好意で、レシピを教えてもらうようになった。出入りし始めて、まだ一週間も経たないのに、アルファロの家族だということで、可愛がってもらっている。キリッとして、澄ました顔をしてる割に、笑うと可愛い、世話好きな、セリエルにとっては、本当のお姉さんのような人だった。
 他の店にはない、極上の味を思い出して、セリエルは心を温めながら、期待に胸を膨らませて急いだ。
 マイラなら、何か作ってくれるかもしれない。
 でも、いざお店の前までくると、ドアのガラス越しから中を覗き見ながら、セリエルは中々一歩を踏み出せずに、臆した。
 いくらなんでも、やっぱり、こんな朝早くからだと迷惑かな…。
 カウンターの奥は、明かりは灯っているものの、マイラの姿は隠れていて見えない。
「おはよう、セリエル」
 爽やかな挨拶の声が、後頭部からして、セリエルは驚いて振り向いた。
「え? マ、マイラ!?」
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