メトセラの仲間たち - 新進画家に復讐してください -
第7章 賑やかな尾行
その後、手早く食器類を片すと、先にアルファロの後をつけてもらっていたデュマに居場所を教えてもらって、すぐにそちらへと急行した。
あたしの過去が分からなくっても、アルファロがなんでこういう仕事してるのかも訳分からないけれど、殺しとか、復讐とかの依頼だけは、絶対に阻止しなくちゃ!
「彼、今はデパート街を歩いてるわ。サマンドが、そこで気晴らししてるみたい。…あなた、本当にあたしの味方してくれるんでしょうね!?」
「も、もちろんよ。正当な理由があるのなら、あたしだって…復讐は、…その…、少しくらいはいいかなって、思うし…」
苦し紛れの言い分だが、デュマは怪しみながらも、そんなセリエルに、力を貸してくれた。
今日は祝日。アルファロの行動を、監視してやるっ。
そう意気込んではみたものの、通りを小走りに駆けている途中で、やっぱりどうしても後ろめたさを引きずった。
確かに、これはアルファロの仕事だし…と。
あたしは、関係のない人間。家族でもないし、ただの同居人。口を差し挟まれるのは、アルファロだって嫌だろう。
「…でも、やっぱり、おかしい」
それに、アルファロには、こんな仕事には、手を出して欲しくない。
自分に冷たくっても、意地悪でも…。
セリエルは、唇をキュッと引き締めた。
昨日の優しさまで、嘘だとは思わないから。
赤の他人なのに、朝まで側にいてくれた。約束守って、一歩も外には出なかった。そんな人が、悪いことに加担するのは、やっぱり…嫌だ。
あたしが、引き戻さないと。
そこで、路地の角を曲がったところで、バッタリと、またオルレイン伯爵に遭遇して、セリエルは立ち往生した。
伯爵は、あるのかないのか分からない薄い目を少しだけ開けて、白い息を吐いているセリエルを、注意深く観察している。
「やぁ、これはこれは、また会いましたの、お嬢ちゃん」
温和な表情だが、あまりに不自然すぎる。まるで、行く手を遮っているかのようで…。
ハッとすると、セリエルは、伯爵の側をすり抜け、駆け出した。
「ごめんなさいっ、伯爵! 今は時間がないのっ。後でまた…」
そう言いながら、前を向いたセリエルの体の横に、ヒュッと、黒いシルクハットが現れ、ギョッとして立ち止まりかけるが、同時にデュマの顔も現れて、気を持ち直した。
「走りなさいっ! 伯爵は、囮よ!!」
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