大根と王妃シリーズ 番外編 『神和ぎの巫女と神堕としの少女』
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発行者:大雪
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2010/07/21
最終更新日:2010/08/22 21:13

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大根と王妃シリーズ 番外編 『神和ぎの巫女と神堕としの少女』 第5章 土砂崩れと歌
「って、ほ、他の車はっ」

しばし呆然としていた蒼麗だが、すぐに辺りを見回す。


「大丈夫、あそこにさっきまで居た車は全てこちら側に渡りきってますから」

萩波が安心させるように言えば、同じく不安そうにしていた果竪がホッと胸をなで下ろした。

「ですがここも何時までも安全とは言い切れません」
「そうですわね、早く麓に降りた方が宜しいですわ」

弱まった雨脚が再び力を取り戻している。
確かにこのままでは危険だろう。

「他の車もさっさと出発したようですし、行きましょう」

そう言うと、萩波が車を発進させた。

車体を殴りつけるような雨の音が静かな車内に木霊する。
不思議なことに誰も口を開かなかった。
まるで、口を開いてはいけないような雰囲気すら車内に漂っていたからだ。

しかし、それでも蒼麗は気になるそれがひっかかり、ついに口を開いた。

「あの……さっき、何かあったんですか?」
「何かとは?」

いち早く反応したのは蓮璋だった。

「いや、その……突然車が急発進した事です」

発進する前に、蓮璋が萩波に何かを囁いていた。
萩波はそれを聞いた瞬間、表情が変わった。

「……いえ、ただちょっとした助言ですよ」

蓮璋がにこりと微笑めば、それ以上は聞けない。
なぜなら、それ以上は聞く事を許さないというかのような笑顔だったから。

よって、蒼麗はそれ以上の質問を諦めるしかなかった。

「何も心配する事はありませんよ」

蓮璋の安心させるような言葉に曖昧に笑い、蒼麗は窓の外へと視線を向けた。


――――――っ


「果竪?」
「ん?」
「その歌は何?」

隣で果竪が口ずさむ歌は聞いた事がないものだった。
不思議なメロディーは妙に耳に残る。
美しく綺麗なメロディーだから当然と言えば当然だが……何故だろう?
まるで喉に刺さって上手くとれない魚の骨のような不快感を抱く。

取れそうで取れない

そんな感覚が、蒼麗の中に生まれる。

「蒼麗さん、怒ってるの?」

ハッと我に返れば、果竪が不安そうに自分を見ていた。

「え……いや、怒ってはいないよ」

そう、怒ってはいない。
ただ、その歌がとても不快に聞こえただけだ。

「それより、その歌は初めて聞く歌なんだけど……どこで習ったの?」

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