七福神の殺意
七福神の殺意

発行者:豊道 豊
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ジャンル:ミステリー・推理

公開開始日:2013/04/03
最終更新日:2013/04/03 10:48

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七福神の殺意 第20章 第二十章
「う~ん、なるほど、膿を出すつもりが、鬼を出してしまったと言うことか。正に生兵法怪我の元、という奴ですね。」
「ええ、どうもそんな気がして成らないんです。中村誠次は、会社や自分の財産を狙う、一族の中の不穏な空気を察知して、それなら先に仕掛けて、そんな輩を排除しようとしたみたいですね。所が、狙っていたのは会社内だけじゃあなかったわけです。」
「なるほど」
川波はうなずいた。
「ところで、文明の事故に関しては、何か解りましたか?」
辺保恭介が川波に聞いた。
「いえ、それが皆目、こんな田舎で深夜のことだから、目撃者も居らず。それに、朝までに随分何度も大型車に轢かれ、巻き込まれているみたいで、遺体の損傷も激しく、司法解剖を担当した医師も、死因すら解らない状態になってると・・・・。」
「その時間帯の、各人のアリバイは?」
「はあ、今調べさせていますが・・・何分死亡時刻が特定できない物で、全員がアリバイがあるといえば有るし、無いと言えば無くなるんです。いや~弱りました。」
「例の、池田元久はどうしていたんです?アリバイは?」
「奴の場合も、アリバイがあるといえば有るし・・・・・。」
「と言うと?」
「今までの婚約者の、妹、すなわち京子の妹の美代子とホテルにいたと・・・・。」
「ホテルの従業員は確認しました?」
「ええ、一応聞きはしましたが、そのホテルは、客がいっさいの従業員、または他の客に顔を合わせないようになっていまして、全く本人の確認がとれないんですよ。勿論宿帳などもないし・・・。」
「そうですか。」
辺保恭介は、腕組みをして、部屋の中を歩き回り始めた。
辺保恭介は何か物を考えるときに、腕組みをして、檻の中の熊みたいに、同じ所を行ったり来たり、歩き回る癖がある。
川波が辺保恭介と話している間に外はもう、夕日が、空を赤く染めていた。
部屋の中も、薄暗くなっているが、辺保恭介は、相変わらず部屋の電気もつけようとせず行ったり来たりしている。
正に、心、此処にあらずと行った感じであった。
川波はそんな辺保恭介をあきれたように見ていたが、それを止めようとはしなかった。
 
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