梨乃3 痴女編
第2章 2
「いやあ、これは稀に見る傑作が撮れたかも知れねえな」
合田富男は、バッグからビデオカメラを取り出した。
スイッチを操作して、記録されている動画を液晶画面で確認しようとしたところ、
「やめとけよ。どんな作品に仕上がっているのかは、あとのお楽しみにしようぜ。まだまだ撮影すんだからさあ」
成宮信也が制止した。
合田富男、成宮信也、本間健二、本橋次郎、木村梨乃。彼らは五人で、駅のホームを歩いている。
みな高校生三年生。男子が四人、女子が一人だ。
たったいま、電車を降りたばかり。
ここは無人駅で、現在のところ周囲には他に誰もいない。
男子はみな楽しそうな表情をしているが、女子、木村梨乃だけがどんよりと沈んだような顔をしている。
心なしか、青ざめているようにも見える。
「じゃあ、痴女撮影パート2、駅のホーム編でも撮るかぁ」
そういうと成宮信也が、合田富男からビデオカメラを取り上げた。
「お、なんか分からんけど芸術的でいいね」
本橋次郎が冗談ぽく指を鳴らした。
「芸術家志望だもん、おれ」
無邪気に笑う成宮信也。
「あの……許してくれるっていったよね。さっきみたいなことすれば、許してくれるっていったよね」
梨乃は男子たちの背中をゆっくり追いながら、おずおずと口を開いた。
先ほど梨乃は電車の中で、見ず知らずの男性を半ば襲ったも同然に誘惑し、性行為をし、足元のバッグに仕込んだビデオカメラでその様子を撮影した。
そうすればもう解放してやるから、と本間健二に持ち掛けられて。
何故「解放」なのか、であるが、それは、梨乃は本間健二に脅されていたからである。
教室で、 とセックスをしているところをこっそりと動画を撮影されてしまい、それをネタに毎日のように性行為を強要されていたのである。
最近になって、それがエスカレートし、本間健二だけでなくその友達にまで犯されるようになった。
地獄がいつまで続くのか、という折、もう見逃してもらいたいのだったらと話を持ち掛けられたのが、先ほどの電車内での行為であった。
しかし……
「せっかく成宮信也が芸術作品を作ろうってんだから、もうちょっと付き合えよ。冷たい奴だなあ、お前は」
本間健二は笑った。
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