梨乃2 混沌編
第7章 7
持田はいきなり梨乃の顔を拳で殴っていた。ごっ、と鈍い音とともに、梨乃は顔を苦痛に歪めた。
「なにいってんの? ひょっとして清純な処女のつもりでいるの? タケを誘惑して横取りしといて。ここにタケの物をあたしの許可もなく何度も入れておいて。そのくせ、無理矢理やられるのは嫌なんだ? ふざけたこといってないで、入れてっていいなよ、早く! 突っ込んでっていいなよ! ほら、早く! 早く!」
「嫌だ!」
梨乃は声を大きくした。
身をよじり、再び永田の胸を押し戻そうとする。
脇腹に爪先が減り込んでいた。
持田が蹴ったのだ。
それでも梨乃は、抵抗をやめなかった。
必死に抗い続けた。
過去に戻りたい。
生まれた頃に戻りたい。
なにも汚れてなかった頃に戻りたい。
やり直したい。
すべてをやり直したい。
梨乃は本気でそう思っていた。
「突っ込めっていえ! 早くいえ!」
狂乱したように持田が叫ぶ。
「ごめんなさいごめんなさい! もう許して! やだ、もうやだ!」
彼氏と別れた腹いせから、ついクラスの他の男子を次々と誘惑し、関係を持っていった梨乃であるが、同時に嫌悪の感情もどんどん育っていた。常に、このどうしようもない自分と戦ってもいた。でも抑えることが出来ないでいた。
今回、このように誘惑した男子の彼女にバレてしまったわけだが、確かに都合の良いことかも知れないが梨乃はようやくとんでもない大事をしでかしてしまったことに心の底から気づいていた。
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