梨乃2 混沌編
第3章 3
「いやあ、ほんと、くっだらないことだよなあ」
高橋武は、彼女である持田栄子との冷戦の理由についての話を梨乃に語っている。
他の女子と視線が合ったとか合ってないとか、そういったつまらない争いから、どんどん話がこじれ、これまでに蓄積された他の問題が噴出し、どちらも謝ることなく、互いに口をきかなくなってしまったとのことだ。
「でも、あたしもそういうことあったから」
木村梨乃は、そう同調してみせた。
自分は、現在まだ継続中だけど。
いやいや、別れたんだ。もう関係ない。
梨乃は沸き上がる思いを、軽く横に首を振って追い払った。
高橋武と木村梨乃が現在いるのは利根川河川敷、千葉と茨城とを繋ぐ大きな橋の下。
肩が触れるか触れないかといった微妙な距離にて腰を下ろしている。
学校帰りで、二人とも制服姿だ。
橋は交通量が多く、引っ切りなしにトラックなどが走っているため、ごーーーっともの凄い騒音が響いており、大きな声を出さないとお互いの声も聞こえない状況であった。
「高橋はさあ、やり直したいの?」
梨乃は尋ねた。
うーん、と真面目に考え込んでいる高橋へと、梨乃は悪戯っぽい笑みを浮かべながら手を伸ばしていた。
お腹の辺りに指先で触れ、そっと下へと這わせていく。
「おい、なにすんだよ」
という高橋の声にもお構いなしで指は進み、男性自身のある辺りで、動きが止まった。
上を通る自動車の騒音でほとんど分からないものの、少し、高橋の呼吸が荒くなっているようだった。
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