一つ目狐の少女が泣いた
一つ目狐の少女が泣いた

発行者:鈴倉 蒼
価格:章別決済
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:一つ目狐

公開開始日:2013/03/21
最終更新日:2013/03/21 23:44

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一つ目狐の少女が泣いた 第4章 夜の闇を切り裂くのは、

 ■

 ハと気づくと、夜になっていた。
闇が深深と押し迫り、街灯は煙に阻まれているかのように霞み、
路地で転がっている人が増えたような気がした。
あのときから、特に何も変わってないらしい。
ただ手に持っていた手帳が胸ポケットに戻り、ズボンにはさんでいた仏字新聞が落ちていた以外は。
拾い上げようとしゃがんだところで、
泥まみれ、猫の毛まみれ、糞まみれになっているのに気づき伸ばしかけた手を止めた。
なんとなく、先の拾ってくれた老人を思い出し悪い気もしたが、そのままおいていくことにした。
それから振り返って、夜の街に一歩踏み出そうとした。
次の瞬間。
「―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!」
甲高く、聞き取れないぐらいの叫びが夜の闇を切り裂いた。
否、切り裂かれたのは悲鳴を上げた本人の喉だったのだろう。
そして突然、僕の頭の中に一つのことが鮮明に、
冷静な中で浮かんで、疑ってはならないとさえ思った。
ここは、
本当に、
十九世紀末のロンドンなんだと、
1888年の産業革命真只中なのだと、
あの恐ろしい、娼婦の猟奇的殺人事件が起こったその時なのだと。
9
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