一つ目狐の少女が泣いた
一つ目狐の少女が泣いた

発行者:鈴倉 蒼
価格:章別決済
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:一つ目狐

公開開始日:2013/03/21
最終更新日:2013/03/21 23:44

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一つ目狐の少女が泣いた 第6章 その少女は、
少女の双眸が大きく開かれた。
気持ちが悪いことを聞くのね、と笑われるのではと思った。
違った。
それはそれは、
悲しそうに、
嬉しそうに、
怒り出しそうに、
誇らしげに、
憎らしげに、
少女は言葉を紡いだ。
「ここの本は、みんな歴史の中の物語の、その場面にあった人の日記。
あなたに読んであげたのは、1888年、ロンドンで起きた娼婦の猟奇的殺人事件の当事者の日記。
 そして、このお話はこれでおしまい。
他にもあるのよ、キョンシ―とか、ツェペシ公の末裔の話とか、日本の正直すぎた鬼の話だってあるわ。
……そして、これは全部、その時代に受け入れられなかった考え方。
 せっかくの当事者の意見なのに、もったいないと思わない?」
それから立ち上がって、大事そうに持っていた本を投げ上げた。
あ、と思った時にはそれは本棚に吸い込まれていった。
「何故私たちしかいないのかというと、あなたがそう望んだから」
「何故私たちがここにいるのかというと、それは“今晩”だから」
質問の順番通りではなかったけど、一つずつ応えてくれた。
それから、投げた本を追っていた目を、僕に向けた。
「私の眼については答えられないわ。
だって、自分のことを分かっているモノなど、いないのだから」
それからおもむろに壁際まで歩き、窓にかかっていたカーテンを開けた。
「ほら、もう夜が明ける。
 早くお帰りなさい、帰れなくなる前に」
ゆっくりと、本棚を押すと、それがそのまま扉になって外への扉が開く。
少しさみしそうな少女に、少しさみしそうに聞いてみる。
「また、来れる?
 また、来てもいいの?」
少女はにっこりと笑顔を見せて、
「あなたが望んでくれるなら」

そして僕は、夢から覚めた。





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