一つ目狐の少女が泣いた
第2章 気づいた場所は。
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ハと気づくと、知らない場所にいた。
何となく、知っている場所のような気もした。
そこは暗くて、大きな町の路地のようで、やっぱり町の路地だった。
一歩出ると、太い通りに出る。
それでもやっぱり知らなくて、通りかかった男に声をかけた。
そいつはまるで、前世紀の貴族なような格好をしていて、
「あの、」
「何かな、坊ちゃん。身分を考えてから声をかけなさい」
振り返った男の顔は笑っていて、言葉は優しくて丁寧だったけれど、
目はまったく笑っていなかった。
不思議に思って辺りを見回すと、馬鹿みたいな格好をした男女がたくさんいた。
多すぎるフリルのついたドレスや、紐のついたスーツ。
高すぎる踵に、やたらボタンと毛皮のついた上着。
完全にそこは、いまや本の中でしか見ない貴族の世界だった。
それから、通りを走っているのはただの車ではなくて、
(あれは、馬車…?)
少しずれて見ると、たくさんの馬車が、馬が通りを走っていた。
直後、後ろから轟音が聞こえて、振り替えるまもなく
「小僧邪魔だ、轢くぞ!!」
あわててもとの路地に飛び込んだ。
パコ、パコ、パコ、ガラン、ガラン、ガラン。
ものすごいスピードで大型の馬車が通り過ぎていった。
口汚く言ったのは、たぶん御者だろう、そこまで教養のある奴じゃないから。
そこまで考えて、ふと自分の体を見て、
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