一つ目狐の少女が泣いた
第4章 夜の闇を切り裂くのは、
指がむずむずしてくる。
何かに、それを書き記したいと、そんな願いが、望みが渦巻く。
さまざまな思いが頭の中を巡って、それでも足は悲鳴が聞こえた方へと歩き続けていた。
そして、直感的にここの角を曲がったらソレが見える、と思う。
どこから出したのか分からないが、右手にはペンを握っていた。
左手が胸ポケットへ伸び、手帳をつかんで、取り出そうとしたところに。
ピシャン。
と何かの液体を踏んだ。
予想はついたものの、ゆっくりと見下ろす。
おぼろげな街灯の下でも、その色はよく見えた。
赤い、赤い、真っ赤な液体。
光沢を放つ様子はバラの紅の様でもあって、それ故に何か恐ろしい液体。
街灯からわずかでも離れてしまえば、それはただの黒い液体となる。
思いが渦巻いて、
とうとう現場に来れたのだと、
警察が来るより先に、ソレを見ることが出来るのだと、
そしてソレを自分の手で書き記すことが出来るのだと、
望みがかなうのだと、
それだけ僕は高揚していて、
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