一つ目狐の少女が泣いた
第1章 時代錯誤にもその少女は、
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少女がいる。
目の前に、時代錯誤の綺麗なドレスを着た少女が座っている。
そしてそのひざの上に、一冊の古ぼけて虫食いだらけの本を置いて、
ゆっくりゆっくり読み進めている。
声に出して、誰にでもわかるようにゆっくりと音読している。
それなのに、僕の耳はそれを聞こうとしていない。
規則的にページがめくられるかすかな音は拾うのに、少女の声は聞こえない。
もしかしたら小さな声で読んでいるのかもとあらぬことを考え、口を開く。
そして声は出なかった。
否、出ていたのかもしれない。
なぜなら、少女の肩がピクリと振るえ、顔を上げようとしたから。
そして僕は、少女の表情を見ようとした。
見る前に世界が暗転した。
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