唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1
 席に座るとウォルフは二人分の酒と料理を頼んだ。
 それが結構な数の上クラウスの好物ばかりで、クラウスは「あれ?やっぱり、変だ」と思った。
 普段ならウォルフは今夜の相手を長く放っておくような事はしない。
 用件があったとしても、乾杯の酒を一杯のんだら「後は好きな物頼んでおけ」とやや多めに勘定を置いておくのがいつもの姿だった。最初からこんなに気前のいい姿は見たことがない。
 珍しい事もあるもんだと思っていたが、独りで食べる食事は味気ないから、クラウスにとってこの事は大歓迎だ。
 色男として地元でも名を鳴らしているらしい彼は、相手の面子を守ることに関しては敏感だ。
 ウォルフはそこに真摯な気持ちがなくても、形だけでも、一緒にいる時には大切で夢中だと態度で示す事が出来る男だった。
 往々にして本人下心を満たすために行っているのだが。
 それを不実だと責める気にはならない。
 今を楽しく充実させて生きるという事は、その日暮らしをしているクラウスにも覚えのある感覚だから。
 明日何があるのか判らない生活。
 今を一生懸命に生きる日々。
 そんな中では楽しさのエッセンスやスパイスとして、明日は消える感情だとしても、今の気持ちを大げさに表現し振舞うことは悪いことではないと思っている。
 そう考えてクラウスは思い至った。
…とすると。
 同じ気持ちを持っているとして、ウォルフの行動の意味するところはつまり。
…長く話がしたいという事か。
…そしてそれを少し離れた場所にいる彼女に見せるため、料理を見えるように並べようという訳だ。
…おれとは重要な話があるとでも言ってきたのか。
 彼女を放ってクラウスの所にくる事を考えても、彼女は浅からぬ関係にあると示しているようなものだ。
…もしくは、彼女を追い払うため?何か不都合でもあったのか?

 まもなく店員が陶器のジョッキに入った琥珀色の飲み物を持ってきた。
 安いけれど悪くない、周辺の地域で収穫された穀物で作られる若い酒だ。
 酒場名物の豆と野菜の煮込み料理も目の前に置かれる。
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