唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第11章 【 旅立ちの日 】籠の鳥~カトライン~その1
 金髪の結び目の奥には大きな傷痕。
 動脈すれすれにある傷痕は、死線を潜り抜けてきた証のように見えた。
 紫色の不思議な色をした瞳はクラウスを見て微笑む。
 妖しい魅力にクラウスは今置かれている状況も忘れ見惚れた。
 瞳の持つ力は強く、何もかもを見通すようだ。
 彼女は全身に退廃をまとっていたが、それは彼女の美しさを際立たせるだけだった。
 全てを見つめ理解した。善も悪もその身の内に飲み込み、勝ち進む…まるで戦を守護する女神のようだった。
 蜜を塗ったような艶やかな唇が開き、声を発する。
「悪かったな。乱暴なことをして」
 クラウスに謝罪すると立ち上がり、水差しで濡らした布でクラウスを簡単に清めた。
 汚れていないシーツでクラウスを包むと、仰向けに転がす。その動作には危なげない様子はなく、細い腕なのに腕力はかなりある。もしかしたらクラウスよるもあるかも知れない。
 彼女は綺麗になったクラウスの横に座ると、慈愛に満ちた瞳でクラウスを見た。
「水でも飲むか」
 彼女の問いにクラウスは素直にうなずいた。
 口の中の出血は止まったが、呻き過ぎたのどが嗄れている。話しをしたいという意思表示なのだろうが、その申し出は正直嬉しかった。
 彼女はクラウスに手を貸し、上体を起き上がらせると背中に枕を置き寄りかからせる。
 クラウスの体勢が安定したところを確認して、彼女はその場を離れ、グラスに水を汲んできた。
 クラウスの口元にグラスを運ぶと、グラスを傾ける。クラウスは自分でもグラスを持とうと手を上げかけたが、力が入らず途中までしか上がらない。諦めて彼女の介助するに任せた。
 水が咽喉を潤していく。水をこんなに美味しいと感じたのは初めてだ。
…ああ。生きている。おれは生きているんだ。
 尽きようとしていた命が繋がったとクラウスは実感した。
 グラスの水を飲み干し一息つくと、それを見計らったように、女が口を開いた。
「本当にすまなかった。アイツ等も根は悪いヤツではないんだが…」
 女はもう一度謝った後に部下を擁護した。
 その言葉を聞いて、改めて自分の味方ではなく彼等の側の人間だと感じる。クラウスは一見まともに見える彼女を頼ったら、助けてくれるのではないかと考えていたが、その考えは甘いと悟った。
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