唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1
 だが、クラウスにはその可能性は考えもつかなかった。
 毎年。いつ会っても身奇麗にした騎士の格好しか見ていなかったから。
 それに、クラウスは平民よりも貧しい暮らしが当たり前なのに、生活に苦労している感じは出せない。
 芸人とはそういうものだ。
 人に一時の夢を見させなければならない。
 それを生活の糧にしている。
 そんなクラウスにとって、高級品は自分をより良く見せるための道具としてしか見ていなかった。
 だから、自分の着ている服に関して興味が向けられるとは考えても見なかった。
 クラウスはウォルフの様子のおかしさを推理して、自嘲気味に笑った。
 自分に見とれていると、一瞬そう思ってしまった。
 自意識過剰。
 ウォルフがそんな筈ないのに。
「お前を見ていると、全ての地方をいっぺんに旅した気分になるな」
「そうだろ。おれに相応しい衣装だと思うけど」
「馬子にも…な」
 軽口を交わし。
 二人顔を見合わせると、はははと笑った。
 ウォルフは笑いの表情のまま、クラウスの頭をポンポンと叩いた。
 まるで大人が子供にするように。
 身長が低い事を気にしているクラウスをからかっているのだ。
「まぬけなクラウス。元気でいたか」
「びびりのウォルフ。お前こそ」
 常套句のようにクラウスは言い返した。
 クラウスという名はそもそも賢明という意味の言葉から出来た名前で、ウォルフは狼という名詞を由来した強さを表す名前。
 お互い自分の名前を否定する言葉をかぶせてからかう。
 いつもの二人の間ならではの挨拶。
 馴染んだ空気が二人を包んだ。
 笑いの名残を残したまま、カウンターの席に座る。
 離れていた時間が一瞬で埋められるような感覚。
 友達はやっぱりいいものだとクラウスは強く感じた。

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