唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第10章 【 旅立ちの日 】 籠の鳥 ~ ライムント ~その2
「ライムント」
 クラウスは目の前の現実が信じられず、呆然とした声で男の名を呼んだ。
「憶えていてくれたか…嬉しいねぇ…」
 ライムントが笑みを深める。だが、やはり目が笑っていない。それどころか瞳の中の冷たさが更に強くなる。殺意にも似た色を浮かべていた。
…ああ。この目だ。
 一種の懐かしさと共に思い出す。
 手下に制裁を下した時の目。
 命乞いをする手下を冷酷な瞳で睥睨し、ゆっくり死ぬのがいいか一瞬で殺されるのがいいか尋ねた。
 死を免れるという選択肢のない問い。
 言葉だけではなく、それはすぐに行動に移され、迷いひとつ無く鮮やかな剣さばきで手下は殺された。
 裏切ったら即、死につながる組織だと…ライムントはそう考える男だと、その時にクラウスは悟った。そしてもし逃げ出して再び捕らえられたら、自分も同じ目にあうのだと悟った。
 でも組織に留まり、盗賊の仲間になる気は全くなかったから、覚悟して逃げ出したのだ。
 それもライムントが留守にしている日を狙って、他の団員の隙をついて逃げ出したからだ。それがクラウスに出来る精一杯だった。
 今でもその事に後悔はない。
 クラウスの自由を愛する気持ちは誰よりも強く、自分であっても他人であってもも理不尽な暴力に押さえ付けられる事は何よりも嫌だ。
 一番大切なものは自分の命だが、次は自由だとクラウスは考えている。
 何にも捕らえられず自由に生きていきたいと常に思っているし実行している。
 だが、峠での経験以来、自由に関しての考え方が少し狭まり、精神の自由さえ保障されれば取りあえずは良いという方向になっている。
 一人の持つ力の弱さを充分過ぎるほど実感したからだ。
 せっかく逃げ出し、安全な街についたというのに。安全だと安心したのが仇になった。
 どこにも絶対に安全という場所はないのだとクラウスは改めて痛感した。
 さらにライムントは普通のこそ泥や強盗とは格が違うと思っていたが、ここに来てその考えが当たっていたという事を実感する。そんなこと知りたくもなかったが…
「兄貴。知り合いですか」
 クラウスに圧し掛かっている男は動きを止め、声を出す。
「ああ。峠で飼ってたヤツだ」
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