唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第9章 【 旅立ちの日 】 籠の鳥 ~ ライムント ~その1
 ドンドンドン…
 ドアを強く叩く音がして、クラウスは目を開いた。周囲は明るく爽やかな空気が早朝を感じさせた。 クラウスが寝てからそう何時も経っていない。その証拠に体は重いままだ。
…何か起こったのか?
 ベッドから起き上がり、シーツを体に巻いて立ち上がった。
 ドアから魔法の気配がする。もしかして勝手に開錠されるのだろうか。だとすると単なる泥棒ではなく、宿の者か魔法の使えるほかの者になる。ただならぬ事態にクラウスは身構えた。
 逃げた方がいいかも知れない。
 音と気配を消して窓の方に駆け寄ると、目の前に大男が立ち塞がった。
 無精ひげに覆われ、冷酷な色の瞳を持った男だった。屈強に見える体は、皮で出来た簡単な鎧を着ている。姿だけ見ると騎士のようだ。
 だがその全体を覆う雰囲気は剣呑でまっとうな人間には見えない。荒んだ空気を全身から出していた。
 男は興味深そうな目でクラウスを見つめると、にやりと感じの悪い笑みを浮かべた。
「よお。綺麗な兄ちゃん。ここにデーゲンハルトってヤツがいるだろう。ちょっと話しがあるんだが」
 言いながら、クラウスの腕をひねり上げる。
「…痛っ…何をするんですか!」
 声を張り上げクラウスは抗議した。
 クラウスが睨みつけると、男は冷たい目で睥睨し、クラウスの手を掴んでいた反対の手を振り上げた。
 派手な音を立て、クラウスの頬を叩く。
 体が揺らぎ、衝撃が叩かれた頬だけではなく全身を走った。
 その衝撃で口の中が切れ、しょっぱさが口全体に広がる。
 出血独特の匂いが口の中を充満した。
 叩かれた瞬間は衝撃しか感じなかった頬が徐々に熱を持ち、痛みが強くなる。
 顔も大事な商売道具なのに…そう文句が言いたいが。言ってしまうとどんな事になるのか判らないので口をつぐむ。
「静かにしろ」
 薄笑いを張り付かせた男は、低い声で恫喝する。この男はこういう荒事は慣れているのだろう。
「大事な腕なんだろう?吟遊詩人さん…否、夜は商売なのか」
 竪琴もなく。裸でシーツに包まったままなのに、職業を言い当てられクラウスは男の背後に何らかの組織の存在を感じた。
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