唄う鳥・嘆く竜(前編)
唄う鳥・嘆く竜(前編)
成人向アフィリエイトOK
発行者:行之泉
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
唄う鳥・嘆く竜(前編) 第8章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その4
 つい、引き止めそうになるが、そんな事ではダメだとクラウスは自分自身を叱咤した。
 旅立つ人、道を別れる者を笑顔で送り出せるようにならなければ。旅に生きる者として失格だ。
 未練があるのは確かだが、彼の負担になりたいわけではない。優しいデーゲンハルトがこの気持ちを気にしなければいいと思う。
「おきたのか。まだ夜明け前だ。寝ていなさい」
 だが、クラウスの思いは杞憂だったようだ。静かだが有無を言わせないような言葉が返ってくる。
「ここから私達は違う道なのだから…見送りはいらないよ」
 きっぱりと言われて、クラウスはちょっと傷つく。もう過去のこととして自分を切り捨てられたように感じた。
 未練を断ち切るための、彼なりの優しさなのかも知れないが、そんなの優しさじゃない。
「僕が寝ているうちに旅立つつもりだったのですか」
 デーゲンハルトを責めるような声になってしまい、クラウスは自分自身に失望し落ち込む。
 こんな風に言いたかった訳じゃないのに。
 つい別れを責めてしまう。自分たちではどうにも出来ない事を咎めてしまう。それはデーゲンハルトに対してそう言ってもいいと心の隅で思っているからだ。
 自分自身の信条も歪めて甘えた事を言ってしまっている事に、クラウスは気がついた。

「そんな風に言うな。別れが辛くなるだろう」
 なだめるような困った声でデーゲンハルトは答えた。クラウスの寝ているベッドに近づき、横たわるクラウスの額に親戚でもするようなキスを落す。
「ごめんなさい」
「まぁ。いい。そんな風に引き止められるのも嬉しいな。次に再会することがあったら、イイ人がいても無視しないでくれると嬉しいな」
 茶化したようにデーゲンハルトが言う。
 クラウスは自分の気持ちを受け止めてくれたデーゲンハルトを嬉しく思うと共に、この先またきっと逢えるといった予感めいた感覚を覚えた。
 だから大丈夫。別れが淋しくて哀しくても、次またきっと笑って再会できる。
 不安ばかりを感じていた未来が変化したように感じて、クラウスの心が明るくなる。
「ふふふ…そうですね。判りました。また会いましょう。幸運を祈っています。『嘆く竜』の導くままに」
71
最初 前へ 68697071727374 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ