唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1
 耳を疑う。
「はぁ?」
 クラウスは素っ頓狂な声を上げて、顔を上げた。視線の先でウォルフの瞳とぶつかる。
 ウォルフは何かを言いかけるように口を開いたが、すぐに閉ざした。
 ふと、表情を切り替えると、いたずらを企むような子供っぽい表情に変った。
 出会った頃に戻ったようなウォルフの顔。
「綺麗な衣装だが…何処で手に入れた?」
…もしかして、衣装に見とれていた?
 確かにクラウスが今着ている服は貴族でも手に入れるのは難しい品かも知れない。
 服は頭から被る筒状のもので、足はくるぶしまでの長さで袖は指先を隠すくらいに長い。
 体は布で覆われている部分が多いはずだが、体のラインにピタリとした細身に作られている上、極薄い素材のため見ている者に重たさを感じさせない作りになっている。
 向こうが透けそうな薄い象牙色の絹の布は、紫や青で複雑な植物柄の刺繍が施されており。
 腰にはゆったりとした、複雑な光沢を持つ組みひもをベルト代わりに巻いている。
 まるで高貴な人の宴での衣装か、劇場で俳優が着る舞台衣装のように見える服だった。
 実際にはその通りの物なのだろう。
 これは去年楽しい思いをさせてくれた御婦人から頂いた品だ。
 何でもダンナが色んな場所と交易をしているらしく、祭りに持参した珍しくも高価な服を記念にとくれたのだ。
 どうせこの祭りでしか着ないだろうと、馴染みの宿屋に預かってもらっていた。
 両親が健在な時からの付き合いのある宿屋だったから、親戚の人のように色々と便宜を図ってくれる。
 彼らには小さな箱ひとつ分の貴金属や高価な品を預かってもらっている。
 服や装飾品など、祭りの後には頂き物が増えるから旅で困った時に換金できそうな軽いもの以外はそこに預けている。
 旅の途中で何かがあっても、この場所に戻ってくれば、またやり直しが出来る。
 その事はクラウスの心の支えでもあった。
「ああ。コレ?いいだろう。何でも南方で作られた絹を、東方で刺繍を施したんだって。組みひもは北方産」
 クラウスは自分の服を簡単に説明した。
 ウォルフは貴族だ。
 上流階級の人々との社交の機会はあるだろう。
 高級な品物の知識が深く、単なる好みとして衣装の素材とか作りとかが気になっている可能性はあった。
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