唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1


 酒場のカウンターはがらがらだから、両隣に人のいない場所に席を取ることにした。
 クラウスが辿りつくと直ぐにウォルフも到着する。
 席に座る前に立ったまま向かい会うと、ウォルフは記憶にの通りの長身で、逞しい体はクラウスより一回りは大きかった。
…これじゃ、まるっきり子供と大人だな。
…悔しいけど、体格では負けだ。
 クラウスはこの体格差を前にして、同じ年齢の男として張り合うのは無理だと敗北を認めた。
 対抗心が無くなると、昔馴染みとして素直に再会を喜ぼうという気になる。
 自然に笑顔が浮かんでくる。せっかくの祭りだから、どんな形でも楽しまなきゃ損だ。
 幸いウォルフは、そこそこの家柄の騎士らしい。
 祭りでしか会った事はないから本当のところは判らないが本人の話を信じるとそうらしい。
 それがもし違っていたとしても、気前の良いウォルフは会えば色々と奢ってくれる。
 今日は彼から頼まれた物も持ってきたから、報酬くらいは出してくれるだろう。
 久しぶりにまともな旨い飯にはありつける。
 ウォルフが女を口説くのに夢中で、他の場所に移動してなかった事を幸運と思うしかない。
 気を取り直して友人の表情を取り戻したクラウスは、目の前のウォルフの様子が変だという事に気がついた。
 ウォルフはクラウスの顔を見つめ、いつもとは違う表情を浮かべていた。
 見た事のないような真剣な瞳。
 クラウスの上から下まで、まるで瞳に焼き付けておこうとでも思っているような目で見つめられる。
 年に一度の祭りだから、めいっぱい気合の入った服装で着た。
 今までならその精一杯さを余裕がないとかやり過ぎだとか揶揄するような事があっても、こんな風に見つめられた事はなかった。
 いや。
 一度はある。
 遠い昔、出会った頃。
 だが、それはたった一晩のことで、その後はこんな瞳で見つめられた事はなかった。
 一瞬にして、クラウスは居心地が悪くなる。
 ウォルフの顔が見てられなくて、顔を伏せると彼の視線から避けた。
 そんなクラウスの頭上から聞きなれた声が降ってくる。
「……綺麗だ」
 ため息交じりの言葉は、これはクラウスの聞いた事のない言葉だった。


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