唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1
 この場所は一年前知人に用事を頼まれ待ち合わせの約束をした場所だった。
 だから、そうそうに用事をすませようと考えたのだった。
 酒場の中を半分見回したところで、見知った顔を見つけた。
 目的の男性。
 燃えるような長い赤い髪を一つに結んだ精悍な騎士。ウォルフ。
 記憶にあるよりも身幅が増して、また逞しくなったようだ。
 クラウスは貧相な自分の体を見返してため息をついた。
 顔の造作は整っているはずなのに、瞳が大きいせいで美しいというよりも可愛い容貌になってしまっている。
 そのせいで二十歳を超えていると見られない。
 毎年行っている場所ですら年齢を間違われるのだ。
 一方ウォルフはどう見ても二十台後半にしか見えなかった。
 お互い同い年で今年二十二歳になるというのに。
 今クラウスが彼と並ぶと、十ほど年の差があるように見えそうだ。
 彼は妖艶な美女と身を寄せるようにして談笑していた。
 親しげな空気が二人を包む。
……もう今夜の相手を見つけたのか。
 そう思うと、どっと疲れた。
 自覚していた出遅れ感にトドメを刺された気になる。
 約束を果たしにきたにのに、回れ右をして帰りたい気分になる。
 用件は忘れた事にして他の酒場に行くか…そんな気になる。
 ウォルフから視線を外そうとした所で、当の本人が此方を向いた。
 目が合う。
 瞬間、クラウスの事が判ったようで、彼は嬉しそうに輝く笑顔を向けた。
 懐かしい顔が自分に笑顔を向けてくれる。
 それはそれで嬉しいことだった。
 立ち上がるとカウンターを指差す。
 そっちで話そうという合図だった。
 ウォルフは隣の女性の耳元で何かを囁くと、女性は笑顔で彼を送り出す。
 一瞬クラウスの方を向き、挨拶をするように会釈された。
 その余裕の態度を見て、これは口説くとか口説かないとかの関係じゃなくて、もっと固まった関係に思えた。
…婚約者かなにかか?
 例え、行きずりでもそうでなくても、相手がいるだけで独り身には関係ない。
 クラウスは彼の合図を無視してその場を立ち去ろうかとも思ったが、数少ない気のおけない友人と一年ぶりの邂逅。
 実際、クラウス自身も会って語らうのも楽しみにしていた。
 自分自身が出遅れて取り残された気分になったからといって、八つ当たりするのも大人気ないかと考え直しカウンターへ向かった。

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