唄う鳥・嘆く竜(前編)
第6章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その2
「そうなんですか」
デーゲンハルトの言葉を聞いて少しガッカリする。二人で使うつもりがあるのではなかったと判ったからだ。
でもだからと言って、何も行動しないわけにはいかないと思う。
話しをして、この人はいいなと思った。
もし定住していて使用人の雇える状況の方ならば、彼の元にいるのもいいと思えるのだ。
このまま明日を迎えたら、酒場出会った一人の吟遊詩人で終ってしまう。
とりあえず深い関係になってからならば、突っ込んだ話しもし易い。
でも誘ってダメなら、真っ直ぐに使用人として入る余裕がないか聞いてみよう。
正直に答えてくれるであろう事は今までの彼を見てきて判る。
だが一方、心の隅ではウォルフとの約束や彼の言葉が貼りついて行動を止めようとする気持ちもあった。
一方で今頃彼が何をしているのだろうと想像すると、何か行動せずにはいられない気持ちにもなる。
もやもやとした気持ちを持て余して、クラウスは立ち上がった。心を決める。
「私は…てっきり…」
そう言うと、竪琴を座っていた場所に残し、デーゲンハルトの使っている長椅子に移動する。椅子の隙間…隣に座った。
「……?……」
デーゲンハルトは不思議そうな顔をしてクラウスを見つめた。
「ひとりで過ごす夜が寂しくて、私を誘ったのだと思っていました」
「クラウス殿?」
「デーゲンハルト様。私では貴方をお慰めできませんか。私では貴方のお相手は相応しくないでしょうか」
クラウスが真剣に言い募るとデーゲンハルトの瞳が見開かれ驚愕の色を浮かべた。
ジッと見つめ、クラウスの真意を探ろうとする。
「そんな事はないですが……本当にいいのですか」
その返答で、デーゲンハルトにもその気はあったのだと、クラウスは気づく
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