唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第2章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その1
 クラウスが準備を終え酒場についた。
 太陽が傾き始める、ほんの少し前の時間。
 ドアの外にいても中の喧騒が聞こえてくる。
 古い木製のドアを開けると、独特の甘い香りが辺りに漂ってきた。
 やっと祭りに来た。そう痛感する。
 街で一番多く人を収容でき、値段は手ごろで旨い料理も食べる事の出来るこの酒場。  普段昼間は酒は飯屋として繁盛しているが、今日は朝から本来の酒場としての実力を遺憾なく発揮していた。
 真昼でも陽射しが入らないこの場所は、昼間でもランプの明かりがないと薄暗闇だ。
 その場所でいつもよりも控えめにランプが燈されていた。
 祭りの無い時には少しでも明るいように、獣脂を燃料にしたランタンで明かりを取るが、祭りの間は独特の植物油が使われている。
 数種類の花の香油を混ぜた植物油。
 遠く南国に咲く美しい華の甘い香り。
 香油は花街で主に使われるものも使われてており、その香りを嗅ぐだけでも妖しい場所へ足を踏み入れたのだと感じる。
 入り口から酒場全体を眺める。
 まだ夕方になってもいないのに、席はほぼ埋まっている。
 カウンターはがら空きで、男が二人離れた場所で静かに飲んでいる。
 他の席はところどころポツポツとあいているだけだ。
 親しげに酒を酌み交わす男女二人連れ、親密そうな男同士や女同士のカップル。
 周囲に関係なく騒いでいる集団。
 奥の普段ステージに使われている小さい広間は一人の楽師の演奏で数人の客と思われる人たちが楽しそうに踊っていた。
 ぱっと見て、人を待つ雰囲気を出している人はいない。
 扉を開けた時に視線を感じなかったから、出会いを求めている人も今はいなそうだった。
 少し…いやかなり出遅れた。
…ここでは収穫なしかも。
 何もする前から負けた気分になってきたクラウスだった。
 焦ってはダメだ。
 そうクラウスは自分自身に言い聞かせた。
 例え今日がダメでも、祭りは七日間ある。
 今日の分は取り戻せるはず。
 他にも酒場は沢山ある。
 用事をすませたら、次の場所に移ろう。
 クラウスは気持ちを切り替えると、周囲を探るように見回した。
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