唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第5章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その1
 静かに話していると、近くの客の歓声が耳に入ってきた。
 夢中になって話しをしていたから、気にも留めなかったが。
 よく考えるとさっきから、何だか騒がしくなってきた気がする。
 夜も本格的な時間になり、そろそろ今夜の相手がいる人とあぶれた人に明暗が分かれる頃だ。
 さしずめクラウスも後者になるが、今はその事は気にならなかった。
 男性も周囲の騒がしさに気がついたような顔をした。
「騒がしくなってきましたね。良かったらもう少し話を聞かせて頂けませんか。出来れば貴方の唄も聴きたいと思っています。もちろんタダとは言いません。仕事として受けていただければ」
「喜んで…あ、でもこれからですと、かなり夜遅くなるかも知れません」
 時間を考えると夜更けにひとりで放り出される事態は避けたいと思った。
 今夜の予定がつかなければ、古くから馴染みの荷物を預けた宿屋に帰る方がホッとする。
 その宿屋は学者や修道士などの泊まる宿屋なので閉まる時間が早い。
 その分早朝から開いてはいるが…
 ウォルフが置いていった硬貨を使えば夜更けでも良い宿に泊まれるが、ひとりで宿泊してもつまらない。
 そう思ってクラウスが言うと男性はニッコリと笑って口を開いた。
「ゆっくり唄も聴きたいですし…私の泊まっている部屋に泊まって頂いて構いません。ベッドはひとつですが、かなり広いベッドなので、どちらかが床に寝るなんて事にはなりませんよ」
 男性の表情は特に変わらず、友人に宿泊を勧めるような顔だった。
 でも…と、クラウスは考える。
 もしかしたら遠まわしだけど、艶っぽい誘いなのだろうか。
 そうであって構わないし、それを期待して話しをしていた。
 だけど躊躇う気持ちが胸の奥深くで根を張っている。いつもとは違う心の動き。
 帰ろうか男性についていこうか悩んだが、クラウスは初心貫徹と声にならない言葉を呟くと、綺麗な笑顔で男性に微笑んだ。
「では。よろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしく。楽しい夜になりそうだ…ああ。そう言えば、名乗るのが遅れました。会話が楽しくてウッカリ失念しました。私はデーゲンハルトと申します」
「確かに。私はクラウスです」
 デーゲンハルトの言葉の通り、楽しい夜になりそうだと思う気持ちの傍らで、複雑な思いが渦巻くのをクラウスは感じていた。
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