唄う鳥・嘆く竜(前編)
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第5章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その1
「私一人では食べ切れなさそうなので、よろしかったら一緒に片付けていただけると助かります」
「そう言って頂けると断れませんね」
 クラウスは料理の乗った皿を男性との間に移動させた。
 皿を少し動かすと皿の下にキラリと光る金属が見え、クラウスは不思議に思った。
 もう少し動かす。
 すると皿の下から数枚の硬貨が現れた。
 庶民の市場や店で使える低額の銀貨と銅貨が数枚。
 公や高級な場所でしか使えない、金貨が一枚。
 全部合わせると大した金額だ。
 どうしてこんなところにという疑問はもしかしての気持ちに変わる。
 まるで隠すように忍ばせた硬貨。
 多分、ウォルフの仕業だろう。
 護符の料金は貰っていないから、そのつもりだったのかも知れない。
…だとしても、多すぎだろ。
 硬貨を見つめながら苦笑する。
 街に辿り着く前に身ぐるみ剥がされた事を知ったから同情もあったのかも知れない。
 もし目の前でこれだけの金を渡そうとしたら、多分受け取らなかっただろう。
 いや。今でも哀れみをかけるなと突っ返したい気持ちになる。
 それをウォルフも知っているはずだ。
…もしかして、それを望んでいる?
 最後の日、どんな理由でもいいからもう一度会いたい。そんなメッセージにも思えた。
 またウォルフの事を思い出し、頬が熱くなってくる。
…ダメだ。だめだ。駄目だ。
…隣には良い感じの人がいるっていうのに。
 クラウスは捕らわれそうな気持ちを叱咤した。
 隣の男性に怪しまれないように硬貨を拾う。
 料理と取り皿を男性の前に置き、自分で取ってもらうように促すと、さりげなく硬貨をしまった。
 二人、酒の入った杯を持ち上げ傾ける。
「嘆きの竜に健やかな目覚めに」
 古い乾杯の言葉を男性は告げた。
 杯の上を傾けて上端を触れ合わせた後、杯の下を傾ける。
 男性の行動の意図が見えたのでクラウスもそれに習い、傾けた杯の下端を触れ合わせた。
 昔は収穫祭で行われる『嘆きの竜』の儀式を意識して、庶民でも使われていた言葉と行動だ。
 時代が変わり今では神殿や学び舎、魔法使い達などの知識層でしか使われない。
 クラウスも普通はあまり使わないが、客には色々な職業の人がいる。
 合わせる事にためらいや戸惑いはなかった。
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