唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第5章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その1
 クラウスが店員に視線を移すと、それに気がついた店員が飛んできた。
 上客だと認識されたのか、これ以上ないくらいの満面の笑顔でやってくる。
 クラウスは空になった杯を持ち上げ、同じ酒を頼むと隣に座る男性を見た。
 営業用の笑顔のままニッコリと微笑むと、男性も笑みを返す。
「何を飲まれますか」
「ああ。では貴方と同じものを」
 男性の注文を聞いて店員は店内の奥へ入っていった。
 祭りの人の賑わいや天気の話など、当たり障りのない世間話をしていたら、ほどなく飲み物がやってくる。
 新しい取り皿とフォークをクラウスの前に置き、ウォルフの使ったものを片付けると店員は去っていった。
「一緒にどうですか?」
「いえいえ。お気づかいなく」
 特に空腹ではないのか、男性はさりげなく断った。
 料理を見ても興味を示す様子もないから、普段も良いものを食べているように思える。
 余裕を感じる。
 金を持っている事がその反応だけでも判る。
 クラウスはそんな感じが「良いな」と思った。
 自分を雇ってもらえないだろうかと思う。
 どんな仕事だかは判らないが、単なる使用人でもいいから仕事がないだろうか。
 でもクラウスの出来る事と言えば、吟遊詩人の知識と旅で知ったまじないが少々。
 細い体で筋力もないから、男性特有の力仕事は出来ない。
 手先の器用さは自信があるが、特に何の特技がある訳ではなかった。
 野営の時の料理も自信があるが、街の料理はした事がない。
 どうにもバランスに欠く特技しかない。
 旅をするのであれば、同行するという事も考えられるが、遠くに行ったまま見知らぬ場所で生活するのは躊躇いがあった。
 今までも定住できそうな機会はあった。
 だが、旅で廻る場所から遠く離れ、言葉も違う場所に行くのはためらわれた。
 いつもは行かない場所まで足を伸ばし、辺境の街の領主に気に入られた時には、不慣れな場所で籠の鳥のように自由がなくなるのが嫌で断った。
 いずれにせよ、クラウスは旅で馴染んだ場所から離れることは嫌だと思っていたのだった。
 近くに屋敷があるか、知った場所を巡るような旅をする人ならいいのに。
 話しが聞きだせるだろうかとクラウスは頭を巡らす。
 まずは親しくする事だ。
 会話を進めるべく、クラウスは口を開いた。
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