唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第5章 【 収穫祭 】 夜に啼く鳥 ~ デーゲンハルト ~ その1
 ふと、今は亡き父を思わせるような表情。
父はクラウスにとって放浪の旅に生きた吟遊詩人の先輩になるのだが、他のどの吟遊詩人とは違う不思議な人だった。
 学問に精通し素朴で真っ直ぐな人だった。
 神話や伝説。学問の基礎。
 楽器の奏で方や唄。
 吟遊詩人に必要なことは全て学んだが、恋愛や人との駆け引きなどは教わったことはなかった。
 旅の中で生きると刹那的で享楽的になっていくものだが、まるで巡礼の修道士のような清らかな旅を続けていた。
 だから、父親が死ぬまでクラウスは世の中の汚れた部分を見る事はなかった。
 旅で使う定宿は巡礼者の使うものと同じで、話題は世情以外は学問の事。
 唄う歌は伝説伝承モチーフのどちらかと言えば色気のないものばかりだった。
 そしてそこでは危険は少ないが好奇心旺盛な青年の満足するような出会いはなかった。
 男性が隣に座ると、クラウスの反対側の隣。
 ウォルフの座っていた方を見た。
 彼の飲んだ杯が残されている。
「お連れの方がいるんですか?」
 気軽に言葉をかけらる。
 その中には駆け引きのような色はなく、ただ世間話のひとつとして言っているようだった。
「いえ。友人と再会して少し話しをしただけです」
 言外に約束した人はいないと返答する。
 クラウスの言葉をきいて、男性は表情を変えることなく「そうですか」と答えた。
 その回答を聞いただけで、艶っぽい駆け引きはないのだと判る。
 でもだからこそ、そんな素朴な反応が好ましかった。
 このまま出会った人と語らう夜があってもいい。
 そんな風に考えて、クラウスは会話を楽しむことに決めた。
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