唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第1章 【 収穫祭 】 プロローグ
 だが、さすらう仕事をしている者は自分の希望だけで定住できるものではない。
 どこの街のシステムも部外者にとっては冷たいものだ。
 魔法で農作物の収穫量が格段に多くなったとはいえ、増える人口以上に労働者を受け入れるような余裕はない。
 でもどの土地でも人手が充分に足りているかというと、そういう訳でもないらしい。
 希望する人を無尽蔵に受け入れる余裕はなくても、隙間程度の人ならば入る余地はあるのだ。
 だから街で暮らしていくためには、仕事で雇ってくれる人か愛人か伴侶として生活をともにしてくれる人を探せばいい。
 人に取り入るのは仕事上得意なクラウスだったが、なかなか都合の良い人を射止めることは出来ずにいた。
 歌を唄って物語を語る事と、就職活動に必要な行動や交渉術。
 その間には深い溝があるようだった。
 各地を訪問し定住への希望をつなぐが、田舎では余所者の入る余地は極めて少ない。
 そうなると自動的に街へと期待がかかる。
 そして収穫祭の時には、驚くような出会いがある。
 そのことを身をもって知っているから、クラウスの期待は更に高まるのだった。
 彼は細くゆるくウェーブがかかった栗色の髪を持ち、整った顔立ちをしている。
 どれも人受けすることは確かだった。観賞用としては合格点を軽くクリアしている。
 だが、平均よりも大きめな瞳と細身で小柄な体型が全てを台無しにしていた。
 その姿は実年齢よりも随分若くみせる。
 対等なパートナーを探すのは不利で、その体格から力仕事は望めない。
 せいぜいツバメ趣味の女性か稚児を探す男性の庇護を求めるのが容易そうだった。
 事実、同じ年の相手と時を過ごしたのは初めて一人で参加した収穫祭だけだ。
 それも失敗に終ったという、甘くなくすっぱい記憶だけだ。
 他にも思い出したくないような失敗は幾つもあるが、嫌な記憶は教訓にして明日の幸せの糧にしようと前向きなクラウスだった。
……今年こそは。こんな不安定な生活からおさらばだ。
 そう決意したはずだったのに。
 いつも近道に使っていた山道が土砂崩れで使えず、道を迂回したせいでいつもよりも遅い時間になってしまっていた。
……幸先悪いな。
 まるでこれからの事を暗示させるような出来事に、クラウスは心の底から悪態をついた。
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