唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第4章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その3
 クラウスにはこんな風に真っ直ぐ好意を告げられたことは今までない。
 一期一会の出会いの中で艶っぽい駆け引きは覚えたが、ゆっくり育む関係は作ってこなかった。
 そういう事が世の中ではあること走っている。
 知識の中では。
 数多ある恋愛歌を奏で唄う詩人なのだから。
 だが、実感としてそれを感じることはなかった。
 どこか遠いところの話しで自分とは関係ないのだと思っていた。
「だから…な。俺との思い出があんなヒドイ夜なんてカッコ悪すぎだろ。思い出だけでも良くしておきたいんだ。俺はお前とこの先の約束は出来ないから…もしお前に良い人が見つからなかった時でいい。最後の日、ここで待っているから」
 そういうとウォルフは立ち上がった。
 店員を呼ぶと勘定を払う。
 優雅な身のこなしでクラウスに近づくと瞬間肩を強く抱き、耳元で囁いた。
「いい思いさせてやるから。絶対来てくれよ」
 掠めるようなキスを頬に残して、ウォルフは踵を返し立ち去った。
 驚いてクラウスが振り返るとさっきまでの表情は一変して、元の彼の顔に戻っていた。
 自信に満ち溢れた青年の顔。
 ウォルフは手を上げクラウスに友にするような挨拶をすると、彼を待つ女性の元へ戻っていった。ウォルフが戻ると女性は立ち上がり、とクラウスににこやかな笑顔を向けると会釈した。
 ウォルフは彼女に親しげに笑うと耳打ちし、そのまま二人は連れ立って店から出ていった。
 その姿は仲睦まじい恋人同士にしか見えなかった。
 クラウスの胸に棘に刺されたような痛みが過ぎる。きりきりとした痛みに顔をしかめる。
 頭の中がモヤモヤする。苛立ったまま悪態を口にした。
「何なんだよ。あいつ」
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