唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第4章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その3
「風の峠……か」
「うん」
 祭りの最中に仕事の話はしたくなかったが、街の治安に関する事であれば一応知らせておいた方がいいだろうとクラウスは思った。
 風の峠という言葉にウォルフは反応した。
 クラウスの思った通り、心当たりがあるのだろう。
 瞳が翳り真剣なまなざしでクラウスを見つめる。
「そうか。あの辺りで…大変な目にあったんだな」
「情報ありがとう。お前の言う通り、あの辺りは突然物騒になったんだ。俺の担当とは違うが騎士団が治安のために入って討伐したはずだ。惜しい事に賊の首領は逃したようだが…」
 暗く沈む瞳の色はあの場所で悲惨な事が起こっていた事を示している。
 やはりおそらく何の罪もない旅人達が何人も犠牲になったのだろう。
 負傷しながらも逃げ出し、こうして友と再会して美味い食事が出来る自分はなんて幸せなんだろう、 そう実感する。
 そう。自分を思って見守ってくれる友人がいる。それだけでも幸せじゃないか。
 クラウスはそう思うと、それ以上を求める事は贅沢な気がしてきた。
 幾ら久しぶりとはいえウォルフを独占しすぎたと改めて痛感する。
 気になって、クラウスはチラリと後ろを振り返った。
 ウォルフが残してきた美女は退屈そうに料理をつついている。
 ふと顔を上げ、クラウスと目が合った。
 彼女はにこやかな笑顔をクラウスに向けると手を振った。
 クラウスも作り笑顔を浮かべ、重ねられたウォルフの手をさりげなく振り解くと小さく手を振り返した。
 いい人だ。
 こんな日にウォルフを独占しているのに、嫌な顔ひとつしない。
 ウォルフには似合いの相手のような気がした
 彼女ならば良い恋人、良い妻になるだろう。
 クラウスの中で罪悪感が湧き上がる。胸が痛んだ。
 「お前…さ。そろそろ、あの人のところに戻ったら?こんな日に放っておくなんて、可愛そうだぜ」
 苦しい気持ちのままクラウスは思った言葉を口にする。
 もう自分は大丈夫。
 いつもの自分だ。
 そう態度に示すため。クラウスは中断していた食事を再開した。
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