唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第4章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その3
 ここまで言ってしまっては仕方ない。
 そう、クラウスは思い、本当の事を告白する覚悟を決めた。
 せっかく誤魔化したのに、自分で墓穴を掘ってしまった。
 出した言葉の責任は自分で取らなくてはならないだろう。
 それが自分なりの友情の示し方だから。
 本当は言いたくなかった。
 下手を打ったのは自分の責任が大きい。
 旅に生きる吟遊詩人なのだから、旅の中での安全は自分で作らなければならない。
 気をつけるべきところで気を抜いたのは自分自身だったから。
 けれど、必要以上にウォルフに気を使われる事が判っていた。
 街で暮らす人は守られて当たり前で、その守る仕事をしているのがウォルフ達騎士でもあるから。
 彼なりの正義感で憤慨も慰撫もしてくれるだろうけど、今はそれは辛かった。
 何より思い出すの事が辛い。
 負った肉体の傷はもうすっかり良くなったというのに、心の方はまだまだ治ったとは言いがたかった。
 大丈夫だと自分自身に言い聞かせているけれど。
 忘れているつもりでも気を抜くと、ふとした拍子に、あの時の事が蘇ってくる。
 恐怖と苦痛。
 それは心を苛み、深く暗い場所へとクラウスを誘う。
 表面を取り繕って、単に傷を思い出さないように外に出さないようにしているだけだ。
 上手に傷を隠した包帯の中で、傷は膿み広がっている。
 忘れるために、今のクラウスには享楽に興じる必要があった。
 だからそのためには早く話しを終らせるしかない。
「勘がいいね。相変わらず。そう、ちょっと前にね、風の峠で強盗にあった」
 クラウスが明るく軽い口調で応じると、ウォルフは固く鋭い目で見つめる。
「………やられたのか?」
「ま。ね」
 単刀直入に聞かれ、クラウスはあっさりと答えた。
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